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できるようになったきっかけ【さとゆみの今日もコレカラ/第 130 回】

誰かが何かを始めたとき、何かを辞めたとき。私たちは、その「きっかけ」について聞くことが多い。とくにライターは「きっかけ」を聞きがち人種だ。

「何かを辞める」ときは、きっかけがあることが多い。たとえば私は、1日4箱吸っていたタバコを 30 歳でやめた。きっかけは、子どもが欲しくなったからだ。辞めるは「点」であることが多い。辞めた動機も辞めた瞬間も可視化しやすいケースが多い。

一方で、「何かを始めたきっかけ」や「何かができるようになったきっかけ」は、もうすこし漠としていると思う。

ものごとを始めるときは、いろんな要因がからまりあっている。いろんなきっかけがあって、スタンプカードの最後の1個が押されたときに何かを始めることが多い。だから「きっかけ」を聞かれると、困る。明確な「点」で答えられないことが多い。

「できるようになったきっかけ」を答えるのは、さらに難しい。逆上がりのコツをあるとき突然つかむように、できるとできないの間には明確な差があるのだけど、逆上がりをできるようになったきっかけは、逆上がりをずっと練習していたからだ。

だから「きっかけ」を聞くのは野暮なことも多い。野暮だとわかっているのだけれど、そこに何かわかりやすいヒントがあるのではないかと思って聞いてしまう。ことに我々ライター人種は「きっかけくれくれ星人」になりやすい。

実は最近、私も「きっかけ」について聞いた。

CORECOLOR で連載をしてくれているマンガライターのちゃんめいの連載原稿が、最近とみにキレッキレだなと思ったからだ。昨年末くらいから感じていたのだけれど、どれもこれも筆がノッている。年明けになってからは、そのキレが加速した。とくに今日アップした原稿は、ジェットコースターに乗せられたような疾走感があった。一気読みした。

あまりに面白かったので、「ちゃんめいの原稿、リズムの取り方がすごく良くなったと思うのだけれど、何か書き方を変えた?」と聞いてみた。ちゃんめいからは、「変えたというか、筋トレが効いてきたのかもしれません」と返事がきて、昨年の 10 月からちゃんめいがやってきたという文章訓練の話を教えてくれた。

それが、「そこまでやるか?」という武士道的内容だったので、やっぱり「できるようになったきっかけ」は、ある日何かをドーピングしたみたいな「点」ではなく、継続の集合体なのだなと思った。

昨年 10 月といえば、ちゃんめいをはじめとする、CORECOLOR の連載執筆陣に、メンバー向けのトークショーをしてもらった頃だ。どう書いているの か、何を工夫しているのか、それぞれの知見を交換し合った。

ちゃんめいは、そこで何かを感じたのだろうか。それで筋トレを始めたのだろうか。それについては聞いていないけれど、あのときのちゃんめいとは、もう、別人なのだと思う。この先も、どんどん脱皮を繰り返していくのだと思う。

こういう仲間がいることを、誇りに思う。誇りに思っているだけじゃなくて、私も負けていられないと思う。この先も私は書くし、いつか多分ぐっと上手くなるはずだけど、そのときに「上手くなったきっかけは?」と聞かれても多分答えられない。でも、答えられないくらいたくさんあるきっかけのひとつにきっと

「ちゃんめいの筋トレの話を聞いたから」があるだろうと想像する。

【この記事をおすすめ】

成功や失敗を積み重ねながらも、自分が少しずつ変化していく感覚が、育成ゲームをしているような、ポケモンを進化させていくような楽しさがあります。

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