
「若手についていけない」と焦っていました【さとゆみの今日もコレカラ/第 308 回】
自分なんかもう、全然価値がないんじゃないかな。後輩に道を譲ってさっさと引退した方がいいんじゃないかな。面と向かって言われることはないけれど、あの人の考えはもう古すぎるんだよねと思われているのではないかな。
そんなふうに感じたことはあるだろうか。もう、誰からも必要とされていない感じ。
同世代の友人たちと話をすると、わりとそんな話になる。後輩が優秀すぎて。最近の業界のアップデートについていけなくて。私、老害になってないかな……etc.
今年の夏の始まりのころ。いろいろあって、だいぶどんよりしてた。今までは、ふーん、そんなもんかなと聞いていた友人たちの悩みが一気に自分ごととして感じられるようになっていた。
「五島、ひと夏の大学」に参加したのはそんなうじうじ期のことだった。『ライフシフト』のリンダ‧グラットン氏、『倫理的資本主義』のマルク
ス‧ガブリエル氏など、錚々たるメンバーの講義を、篠田真貴子さんや山口周さんが読み解く。大学生や20代の若手たちとインタラクティブに議論を深める時間もあった。
リアルに参加している若者たちも、オンラインで書き込みをしてくる若者たちも、本当に鋭くてよく勉強していて建設的で、私は早々にたじたじとなってしまった。
遠慮も何もなく、白熱教室のようにどストレートに交わされる議論。やばい、全然ついていけない。そんな視点で世の中に疑問を持ったことない。そこまで考えたことなかった。そんな感じ。もう、若い人たちの思考にはついていけないんだなあ、なんて悲しい気持ちになってきた。
このイベントで、マルクス‧ガブリエル氏の講義を受け、議論を深める役割だったのが山口周さんだ。私は心の中で、「若者のみんな。頼むから、山口周さんを困らせるような質問をしないで。『大人世代の叡智』の象徴のような山口周さんが、若者の質問にたじたじしている様子を見ちゃったら、私もう、立ち直れないかもしれない」と思っていた。
いやほんと、今思うとこれ、誰様目線だったかなと思うよね。どんだけ失礼な上から目線よ。
山口さんの進行は感動的だった。
「ガブリエル氏は金融について触れていないがどう思うか。金融セクターに反論できないのが現代の課題では?」
「ガブリエル氏が言う倫理最高責任者の存在をどう思うか。倫理とはトップダウンで押し付けて良いものだと思うか」
「ガブリエル氏の思想は、そもそも西洋哲学が土壌だと思うが、西洋以外では別の資本主義のモデルが実現されているのか?」
このような質問に対して、山口さんは、いろんな国の事例、企業の事例を交えて解説し、考察し、さらに議論が深まるように促していく。もう、聞いていて鳥肌だった。
老いて衰えていくことに漠然と怯えている私にとって、知性あふれる大人の姿がそこにあることは、どれだけ希望に見えたことか。山口さんの受け答えは、「こういう大人になりたい!」と思う姿、そのものだった。
講義が終わったあと、山口さんに直接インタビューさせていただく時間をいただいていたので、私は記事に必要な質問を終えたあと、個人的な疑問を聞いてもらった。
「あの、私、いますごく、自分が老害になっているんじゃないかって怖いんです。だから今日の山口さんの進行には感動しました。山口さんが考える、良きリーダー、良き先輩とは、どんなものですか?」
山口さんは、サーバントリーダーシップについて話をしてくれた。「傾聴が大事ということですか?」と質問を重ねた私に、「聞いているだけじゃ仕方ないよね。彼らが前に進めるように、いろんな支援をしてあげられないと。人的資本、社会資本、金融資本をどんどん割譲していくのが大事だと思いますよ」と話してくださった。
はるばる長崎県の五島まで行ったのは、この山口さんのファシリテートを見るためだったのだな。この問いを持つためだったのだなと思った。
私が感動した山口さんのセッションの記事、昨夜、ビジネスインサイダーさんでアップされたので、よかったらぜひご覧ください。


