
カセットテープとあの日の約束【さとゆみの今日もコレカラ/第493回】
子どものときに乗っていた自宅の車には、カセットデッキが搭載されていた。
移動中はだいたいラジオがかかっていたけれど、ときどき、カセットが投入されて、両親が好きな歌謡曲がかかることもあった。
このカセットデッキ、春休みの期間だけは、父親の声が吹き込まれた音声が何度も何度もリピートされた。
小学校の先生である父親が、新しく担任を持つ子どもたちの名前を覚えるのに使うのだ。
自分で吹き込んだ、子どもたちのフルネームを聞いては、英語のシャドウイングのように何度も繰り返す姿を、後部座席で見ていた。
担任が決まってから始業式までは、1週間弱。
その間に、前の担任の先生から一人ひとりの性格や頑張って取り組んでいることを聞き、クラス写真を見て名前を覚え、音声でも吹き込み、繰り返し聞き、始業式に臨むのだという。
小学1年生の担任になったときは、保育園や幼稚園まで行って、やはり先生方から話を聞き、入学式までに子どもたちの名前と顔を覚えていた。
「そんなの、めんどくさくない?
顔と名前なんて、実際に会ってから覚えればよくない?」
そう言った私に、父は、
「入学式や始業式、どんな先生に習うのかドキドキしている子どもたちに、『今度の先生は、僕の名前、最初から覚えていてくれた!』と思ってもらいたいんだ」
と、言っていた。
そういえば、その初日に「みんなは、先生に何をしてほしいですか?」と、聞くとも言っていた。
休み時間に遊んでほしい、怒らないで優しくしてほしい、勉強をわかりやすく教えてほしい……。
子どもたちから、そんな要望が出てきたら、「じゃあ、1年間、先生はそれを約束するね」と、約束を交わして帰ってくるのだという。
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昨日までの3日間、22人の火曜ゼミメンバーからインタビューを受けていた。明日からは、また22人の土曜ゼミメンバーからインタビューを受ける。
zoomから切り出した22人の顔写真を見ながら、このゼミに入る前に書いてもらった「どんなことを知りたくてゼミに参加したか」を読み返していた。
1月に始まったゼミの初日には、全員のその希望を書き出して、「3ヶ月後、このみんなの希望が叶うように、私も頑張ります」と約束してスタートした。
一人ひとりの顔写真を見ながら、残り少ない時間で、あと、何を学んでもらえるかを考える。彼/彼女が、1月に思い描いていた、理想の自分に少しでも近づいているかな、と考える。
考えていたら、父親のカセットテープのことを思い出した。
夢にも出てきた。
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もしこの先生たちがいなかったら、私たちはどんな人間になっていたのでしょう。


