
さよならマイケル【今日もコレカラ/第966回】
昨夜、映画『マイケル』を観に、映画館に向かっていた。
その最中、あ、席を予約するのを忘れたと気づく。
直前まで、息子に「ねえ、一緒に行こうよう」「ヤダ」「行こうよー」「お前はダチョウか?」というやりとりを繰り返しているうちに、すっかり予約を忘れてしまったのだ。
でもまあ、夕方予約サイトを見たときはガラガラだったから、いけるっしょと思って、駅からの道でサイトを開いたら、すでに予告編が始まっている時間で、購入不可とある。
げげ。
急いで映画館に電話をして、「本編は何時から始まりますか?」と聞く。10分後だという。
「あと3分で着くんですけれど、そちらでチケット買えますか?」というと、「本編が始まる前なら、券売機で買えます。でも、本編が始まってしまうと券売機では買えないので気をつけてください」という。
ならば余裕だと思って、早歩きで映画館に向かった。
ところが、券売機で今日の映画を検索するけれど『マイケル』の文字がない。嫌な予感がする。これ、案内してくれた人の勘違いで、券売機ではすでに買えない時間になっているのではないか?
急いで、窓口に並ぶ。6分前。私の前にはおじさんが一人。まあ、余裕だろう。私は財布からクレジットカードを出して待つ。
ところが、映画のチケット買うのに、なんでそんなに時間がかかる? というくらい、前のおじさんの話が終わらない。2分経っても、3分経っても終わらないので聞き耳を立てると
「おお、じゃあ、この会員になるとお得になるんだね」
とか
「IMAXというのは何が違うの? 音? 映像?」
とか
「6回観ると1回タダですか……それはいいなあ」
とか
「予約するときは、どうすればいいの? え? ネット?」
とか
そんな話をしている。
お姉さんは、辛抱強く応対しつつ、ちらちらと私のことを気にしている。
話は何度も同じところをループして、なんだか志村けんのコントのようだ。
よっぽど、「すみません、もうすぐ本編が始まる時間なので、もしよろしければチケットだけ買わせていただけませんか?」と割り込もうかと思ったけれど、この人だって買いたいチケットがあるかもしれない。
やっと話が終わって、
「じゃあ、少し考えてみるわ」
とおじさんがその場所を立ち去ろうとしたので、よし、まだ間に合うと思って一歩踏み出したら、
「あ、そうだ」
と、おじさんがまた戻って
「この、6回観たら1回タダっていうやつはさー」
と、話をぶり返した。
私は、コントかよってくらいに、ズコっとなった。ケータイを見ると、2分前だ。
結局、おじさんがいなくなって私が「マイケルを! マイケルのチケットを!」と叫んだとき、お姉さんはとても悲しい顔をした。
「もう本編が始まっていますので」
と目を伏せる。
「いや、まだ1分ありますよね?」
と、私はケータイを見せたのだけれど、その瞬間に、コントかよって感じのタイミングで、デジタル時計の数字がピコッと変わった。
終わった……。
オレのマイケルは終わった……。
何か別の映画を観ていこうかとも思ったけれど、マイケル腹だったのでそんな気持ちにもなれず、すごすごと家に戻った。息子が私が作って置いていったお夕飯を食べているところだった。
「どうした?」
というから、ことの顛末を話したら、予約していかないからだよ、としごくもっともなことを言う。
むしゃくしゃするから、近くでご飯食べない? と誘ったら
「俺、これ食ってるけど」
と言う。そりゃそーだ。
「でも、飲み物だけなら付き合ってあげるよ」
と、近場のカフェについて来てくれた。
カフェオレがくるまで、久しぶりにいろんな話をする。
「じゃ、先帰るわ」と、彼は私がワインを飲み終わる前に店を出ていったけれど、まあ、思わぬいい時間になった。
おじさんのおかげで、とまでは思わないけれど。
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