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自分の人生の時間割を作ることは、命の使い方を考えること。『ME TIME 自分を後回しにしない「私時間」のつくり方』

自分のための時間がない! と心の中で叫んでいるのは、私だけだろうか。

1日が24時間ではなくて、あと1時間でも多くあればいいのに……! と願っているのも、私だけだろうか。

仕事に、幼い子ども2人の子育てに追われ、夜、子どもが寝た後に自分の時間を持ちたいと思っても、疲れて子どもと寝落ちしてしまうのは日常茶飯事だ。

そんな私が今年3月から、朝4時に起きて朝活をする、自称「ヨジラー」になることができた。それは、自分の「好き」に囲まれた時間を朝に作ると、起きるモチベーションがあがるよ、と朝活の第一人者である池田千恵さんが教えてくれたからだ。

私は文章を書くことが好きだ。手紙を書くことが好きだ。読んでくれる相手を想像して、自分の想いを言葉にする時間が好きだ。私が今書いている子育て中のお母さん向けのメールマガジンも、手紙を書くような気持ちで配信している。そのメールマガジンを朝4時に起きて書くことを始めた。

朝4時、目覚ましが鳴って起きた時に布団の中で、「今日はあの人に届ける気持ちで書いてみよう」と想像する。すると、不思議と布団から出ることができるのだ。「好き」の力は想像以上に自分の行動を変える力があるようだ。

 

朝活したいと思っていても、なかなかできなかった私が、すっと起きられるようになるきっかけをくれた池田千恵さんが、新しい本を出版された。それが『ME TIME 自分を後回しにしない「私時間」のつくり方』だ。

本を読む前は、正直、「自分を後回しにしない『私時間』を作るなんて、望んではいけない」と思っていた。ましてや、5歳と2歳の子どもがいて仕事もしていたら。朝活をしても、まだまだ時間が足りないが、それは仕方がないとあきらめていた。でも、自分のやりたいことが頭から消えることはなく、むしろ増える一方だ。やりたい! とできない! の溝にモヤモヤして毎日を過ごすのは、もう卒業したい。そう思って本書を手に取った。

本書は、読み物でもありながら、著者の提示するワークを実際に紙に書いてみることで、「私時間」をどう作っていくかを考える実践形式の本にもなっている。ワークは、自分の今の時間の使い方を知ることから始まる。1日が24時間あるといっても、実質自分が自由に使える時間は、想像以上に少ない。この最初のワークで、24時間の使い方が、私は恐ろしく下手だと、気づかされた。

下手というか、時間の使い方に軸がないのだ。仕事や、家事(かなり手抜きだが)や、育児等、「やらなきゃいけないこと」が最優先。そして余力と時間が余り、もし「私時間」を過ごせたら、ラッキーというような生活。そんな私の時間の使い方を見透かしているかのように、著者はこう断言している。「相手を優先させる限り、時間は永遠に足りないまま」と。自分のための、自分が「好き」な時間を優先させて、残りの時間を相手のための時間にする。この著者の考えは今の私の時間の使い方と180度違った。「え? 自分のための時間を優先して本当にいいのですか?」 と思わず著者に問いたくなるぐらいだった。

なぜ、著者が「私時間」を作ることを強くおススメしているかというと、それは自分の時間の使い方は、自分の命をどう使うかということに直結するからだ。自分の人生の時間割を自分で決めて、「好き」「やりたい」ことを意識して過ごすこと。そうすることにより、人生を思いっきり楽しんでほしいという著者の願いが、この本にはある。

では、人生の時間割に入れたい「好き」は、はたしてどれだけあるだろうか。「好きを100個書き出す」というワークでは、正直100個も書き出せなかった。書き出している最中、「好きだけど、子どもがいたらできないからな」とか「好きなのか、やらなきゃいけないことなのか分からないな」という、いろいろな思いが頭をめぐり、素直に自分の「好き」を思い浮かべることができなかった。私は何年も自分の「好き」を後回しにしてきたので、相手を優先に時間を使うべきだ、という思い込みが頭にこびりついているのかもしれない。頭がカチコチに凝り固まっていて、自分の「好き」さえ、分からなくなっているのだ。

本書では、自分のやりたいことが「want」なのか「have to」なのかをしっかり見極めて、純粋に自分の「好き」を知る術を伝えている。1冊の本になるぐらい、多くの人は自分の「好き」を知らないまま過ごしているのかもしれない。

でも、自分の「好き」を知らないまま、自分の「好き」に触れる時間がないまま、この先も人生を過ごしたいだろうか? 誰のものでもない自分の人生、「好き」なことに囲まれて気持ちよく生きたいと願うのはワガママだろうか? その問いへの答えは、Noだ。

もちろん自分の「好き」に囲まれなくても、時間は平等に過ぎていく。しかし、「人はいつでも人生の本番を生きています。いつか来る本番のための人生ではなく、今、この瞬間、毎日が本番です」という著者の言葉を聞くと、1日でも早く、10分でも多く「私時間」を自分の時間割に取り込みたくなった。

もしかしたら、自分の「好き」を優先することに、罪悪感を感じる人もいるかもしれない。でも、ME TIMEを意識することは、決して自分勝手に生きることではない。それは、自分の命の使い方を真剣に考えて行動することなのだ。本書は、自分の人生の時間割の作り方や、手帳の活用の仕方等、実践的なワークもあるが、決してそのワークをすることが狙いではない。ワークを通して、自分に向き合い、自分の生き方を自分で決めて、自分の中から生きるエネルギーを生み出し、人生をより楽しく豊かに過ごせるようになることが目的だ。

人生を豊かに生きるための答えは、読者の頭の中にしかない。筆者が提示する多くの視点をもとに、読者自身が、人生を豊かに生きるための答えを導きだしていく。自分の好きをあきらめないこと、自分の好きに蓋をしないこと。この本を読むことで、そんな、自分に優しい生き方をしてもいいのだと気づいた。

きっと本を読んだ後も、自分の時間の使い方、生き方に悩む時は来るだろう。自分に優しくなれない時も来るだろう。そんな時に自分に丁寧に向き合うために読み返したくなる1冊だ。

文/赤井 瞳

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