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「いつものトークに深みをつけたい!」なら『東京都北区赤羽』を読んで観察眼と冒険心を学ぶ!?【連載・あちらのお客さまからマンガです/第3回】

「行きつけの飲み屋でマンガを熱読し、声をかけてきた人にはもれなく激アツでマンガを勧めてしまう」という、ちゃんめい。そんなちゃんめいが、仕事や人間関係、恋愛……などのお悩みに対して、おすすめのマンガと共にアドバイスをお届けします。

第3回目は、来世は氷輪丸になりたいさん(仮名)からのお悩みです。

“私は友人と自分たちの好きなことについて話すポッドキャスト(音声配信)をしているのですが、自分のトークに深みや引き出しが足りないのではないかと悩んでいます。相方の友人は映画がとても好きで、映画を軸にトークを展開することが多く、聴く人を惹きつける引き出しがたくさんあるように感じます。対して、私は人に語れるレベルの突き詰めた好きなものや、趣味などがあるわけではなく、どうしても友人と比べると話の深みが足りていない気がします。聴いてくれる人を引き込めるような深みのあるトークをするためには、どうすればいいでしょうか? ぜひアドバイスを頂きたいです。”

――霜天に坐せ、氷輪丸!!!!

いきなりすみません、『BLEACH』ネタは拾わねばと勝手にタイピングする指が動いていました。ちなみに私は神鎗になりたいです。

さて、今回のお悩みを解決する前に、私たちは何をもってトークに浅い・深いとランク付けをしているのか……そこから整理していきたいと思います。

浅い話と深い話、その定義とは?

まず、“浅い話”と聞いて真っ先に思い出したのは自分のことです。実は私も相談者さんと同じようにポッドキャストをやっていて、「おすすめのマンガ1冊を3分で紹介する」というテーマで配信し始めて3年が経ちました。先日、初期の配信を聴きかえす機会があったのですが、その際に「うわ、浅いな〜〜〜!」と思わず耳を塞ぎたくなりました。

例えば「〇〇(恋愛漫画)は本当に胸キュンするんです!」とか「〇〇(歴史漫画)は本当に大スペクタクルで…」とか。いやいや、それ〇〇を他の作品に変えてもいけるよな? と。

もちろん一感想としては決して間違っていないし、面白い漫画を読んだ直後って大体こういうシンプルな言葉が出てくるものです。何気ない日常会話だったら問題ないけれど、私の場合はマンガライターと名乗って第三者に発信している以上、やっぱり浅いなぁと思ってしまいました。

その他にも日常生活編でいうと「私・俺の友達が〇〇(超有名人)で、その人が言ってたんだけど〜」から始まる話に対しても「浅っ!」と感じてしまいます。だって自分の話をしているようで全くしていないですもんね、これ。

つまり、浅い話というのは、そこに自分の考えや視点といった“自己”が存在しない話のことを指すのかなと私は思います。

『東京都北区赤羽』に見る、観察眼と冒険心の重要さ

となると、反対に“深い話”というのは“自己”がしっかりと存在する話だということになります。こうしてテキストにするとどこか仰々しくて、今後人と会話するのが億劫になりそうです。ですが、まさにこの“深い話”を体現するようなマンガを生み出している漫画家さんがいるんですよ。それも日常の何気ない瞬間をテーマにして。

それが清野とおる先生です。数ある代表作の中でも『東京都北区赤羽』シリーズは、清野とおる先生が実際に体験したという、赤羽住民との奇奇怪怪な日々を綴った大変刺激的な作品で、赤羽では『ONE PIECE』よりも売れている(らしい)大ヒット漫画です。

温かさと狂気が共存する唯一無二の絵柄はもちろんですが、やっぱりこの作品で注目すべきなのは清野とおる先生の類い稀なる観察眼と冒険心です。

例えば、『東京都北区赤羽』に登場するのは決して人気スポットでも有名人でもなく、本当にごく普通の道や居酒屋、たまたま遭遇した住民の方々。きっと私だったら何も思わず通り過ぎてしまう場所や人を清野とおる先生は決して見逃さないし、そこから派生した体験を徹底的に味わい尽くす。

正直、清野とおる先生には“引き寄せてしまう何か”が備わっている説も否定できないけれど、とにかくありふれた日常を独自の視点で捉え、まるで冒険者の如くさらに奥地へと進み、そこから面白さ(時には怖さも)を引き出すことに本当に長けていらっしゃる漫画家さんなのです。

『東京都北区赤羽』を読みながら、いや、ほかにも『清野とおるのデス散歩』『全っっっっっ然知らない街を歩いてみたものの』『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』『ゴハンスキー』……ああ、全部読んでほしい。そんな神作揃いの清野とおる先生の作品を読んで観察眼、冒険心を学んでみては? というのが今回の答えです。

まずは、物事の二面性や成り立ちを見るところから

――あれ、清野とおる先生はプロだよな。一般人が漫画家の先生と同様の観察眼と冒険心を養うのはなかなかハードルが高いなと今こうして書いていて思いました。なのでもう少し追加でお話しさせてください(笑)。

ちょうどこの機会に『東京都北区赤羽』を改めて読み直してみたのですが。先述の類い稀なる冒険心、観察眼以外に、私たちも明日からすぐ真似できるようなワンアクションがあることに気づきました。それは、物事の別の側面や成り立ちを見ようとすることです。

例えば、『東京都北区赤羽』に登場する居酒屋「ちから」のマスター、悦子ママ、そしてペイティさん。初めて出会った頃のエピソードを読むと、正直どの人物も初対面の印象はもちろん、周囲からの評判は決して好意的なものではなかったように伺えます。けれど、清野とおる先生は決して最初の出会いや周囲からの目線といった片面からではなく、そこから一歩踏み込んでもう一つの面を見ようとする。さらに、なぜ現在の居酒屋「ちから」になったのか、なぜペイティさんはペイティさんになったのか……成り立ちまで辿るのです。

きっと清野とおる先生は意識的ではなく、本当に気になるからそうしているだけだと思いますが、トークに深みをつけたい! と思い悩むなら、物事の別の側面や成り立ちを見つめるところから始めて見るのも良いかもしれません。

自分たちの好きなことについて話すポッドキャストなら、その対象がどうやって誕生したのか、または好きだけではない“嫌い”の部分を掘り下げても面白そうです。

さて、私も帰ってポッドキャスト収録しますか……。

文/ちゃんめい

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