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150年後のミライに向けて私たちが選ぶ「価値」。『150年後の国宝展−ワタシの宝物、未来の宝物』

150年後の未来を想像したとき、「遺したいモノ」はあるだろうか。

東京都国立博物館(トーハク)で開催中の『150年後の国宝展−ワタシの宝物、未来の宝物』は、まさに未来に向けて伝えたいものを凝縮してつめこんだタイムカプセルのような展示だ。

トーハク史上初の公募型展示会は、個人から企業まで様々な「国宝候補」が集まった。そもそも、「国宝」とはその名の通り、国の宝のことだ。また、文化史的・学術的価値が極めて高いものとして法令に基づき指定された有形文化財のことを指す。

同展の企画を担当した、東京国立博物館 学芸研究部調査研究課の課長である松嶋雅人氏によると、たくさんの芸術作品や文化財が生まれても明治以降に「国宝」たるものは未だないらしい。その中で私たちが選んだ「国宝候補」はまさに見ものだ。

会場は「老若男女」という言葉がぴったりな雰囲気だった。制服で訪れる学生から、ご老人まで様々な世代の方が150年後に遺したい「宝物」を観に来ていた。そして、皆、入り口の堂々とそびえ立つゴジラに面食らいながら進んでいく。

この展示は私たちが「未来に遺したいモノ」を見出して考える展示だ。どこかの偉い人が選んだ「価値」ではない。私たち一人ひとりが150年後の未来を考え、自分が選ぶ「価値」と向き合う展示なのだ。だからこそ、幅広い世代がこの『150年後の国宝展−ワタシの宝物、未来の宝物』に興味を持つのだろう。

企業部門からの「国宝候補」も様々だ。東映アニメーションからは「プリキュア」が、バンダイからは「たまごっち」が、クリプトン・フューチャー・メディアからは「初音ミク」が飾られていた。威風堂々と飾られているその姿は、「流行っていた!」「懐かしい!」なんて簡単な言葉では片づけられない佇まいだ。日本発の素晴らしいカルチャーは現在でも「継承」され、常に私たちの生活に彩りをもたらしている。

バンダイナムコフィルムワークス制作の『機動戦士ガンダム』は『機動戦士ガンダム 水星の魔女』として、吉本興業の「漫才」も毎年開催される「M-1グランプリ」として、令和にもそのカルチャーは継承され続けている。

また、人々の暮らしを豊かにした衣食住の文化も忘れてはならない。私たちの生活に溶け込みすぎて忘れてしまいがちだが、キッコーマンの「しょうゆ」や大塚製薬の「ポカリスエット」、湖池屋の「ポテトチップス」も日本を代表とする「価値のあるモノ」だ。150年後でなくても、明日にでもなくなってしまったら、きっと大いに困ることだろう。

それは、同じく出展された「セブン‐イレブン」の昔のコンビニを再現した店舗や、「首都高速道路」の歴史にも言える。過去から現在まで、私たちの今の生活は多くの企業の「モノづくり」よって支えられてきた。

それらは、私たちが本来イメージする美術品のような「国宝」ではないかもしれない。だが、確実に未来に遺したい「価値のあるモノ」だ。

一般公募から集まった「国宝候補」も見方によってはただの思い出の品や文化に映る。
しかし、個人にとっては未来に遺していきたい「価値のある宝」だ。「ファミリーコンピュータ」から「コミックマーケット」、「おばあちゃんの白いハヤシライスレシピ」など、そこには様々な個人の価値と物語がある。その「国宝候補」に私たちはなにを感じるだろうか。

昭和と平成が積み重ねた価値と物語に、来場者の心は動かされる。どうか150年後の未来にも「私たちの国宝」が遺ってますように。

文/Tajimax

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