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天才が集まると極上のエンターテイメントが出来上がる『東京03 FROLIC A HOLIC feat. Creepy Nuts in 日本武道館 なんと括っていいか、まだ分からない』

Writer 菜津紀

暗闇の中鳴りやまない拍手。会場に明かりがつき、終演のアナウンスが流れ始めてようやく拍手の音が小さくなった。私も拍手をする手を止めた。ジンジンとする手のひらを見ると真っ赤だった。頬もギシギシしている。本当に3時間近く笑いっぱなしだった。手を叩き、足をばたつかせ、時にリズムに乗り、体全身で笑った。

その日観た公演の名は『東京03 FROLIC A HOLIC feat. Creepy Nuts in 日本武道館 なんと括っていいか、まだ分からない』

もともと『東京03 FROLIC A HOLIC(フロリックアホリック)』は、東京03と構成作家のオークラさんが様々なカルチャーシーンで活躍する人たちと共に「もっと自由に」「もっとふざけて」というコンセプトで始めたエンターテイメントショーだった。過去には、おぎやはぎやアーティストの浜野謙太さんともライブを開催している。そして2023年、今回の公演の相棒として選ばれたのがヒップホップユニットのCreepy Nutsだった。

お笑い芸人とヒップホップユニットのコラボと聞いて、どんなライブになるのか一切想像できなかった。Creepy Nutsは芸達者ではあるけど、東京03とコント? どんなライブになるんだ? Creepy Nutsは歌うのか? と、公演の詳細が発表された直後も、それこそ観る直前まで全く想像ができなかった。というか、昨年の秋頃Creepy Nutsのラジオ内で発表された時点で、誰もどんなライブになるのか全く分かっていなかった。おそらく唯一、この企画の発案者であり、作・演出を担うオークラさんの頭の中だけに、思い描く絵があったんじゃないかと思う。

蓋を開けてみれば、土台はやはりコントで、そこに自然な形で音楽が融合されていた。ここからここまでがコントのターン、ここからが音楽ライブのターン、という線引きはなく、コントの中に当たり前のように音楽が在った。当て書き(演者のキャラクターに合わせた台本の書き方)で書かれたコント台本だったからか、Creepy Nutsの強みがガンガンに出ていて(むしろ私の知らない面まで見せてくれた)、R-指定さんもDJ松永さんも持っているテクニックを思う存分披露していた。なんというか、すごすぎる光景に笑うしかなかった。

Creepy Nutsのターンも最高に盛り上がったが、GENTLE FOREST JAZZ BANDの演奏も上質で、コントとコントの間も一つの作品として成立していた。休んでいる間なんてなかった。

そう、休む間なんてない。3時間以上という長い公演だったにも関わらず一切ダレなかったのは、人生の縮図のように二転三転する展開と、幾多にちりばめられた伏線のおかげだった。計算されすぎている。違和感なく撒かれた伏線と、それを全力で回収しに(笑わせに)来る姿。爆発のような笑いが起こる会場。

ちなみにその日は武道館の2階席という結構上の方で見ていたのだけど、それでも頭上から笑いが降ってくる感覚だった。ぶわっと全身が毛羽立つ。演者はこの音を浴びてどんな感覚になるんだろう、とぞくぞくした。

公演を見終わった後、私はぼうっと、熱に浮かされた状態のまま会場を出た。体は水を与えられた植物のように、細胞のひとつひとつがぱんっぱんに満たされていて、この数時間で体が膨張したようだった。最上級のエンタメを浴びて、私はこれからも生きていけると確信した。

感想をどう表現しようか、と言葉を探す。面白かった、楽しかった、すごかった、伏線回収気持ちよかった、まじ天才、など、口にするのは簡単だ。だけどその言葉全てが陳腐に思えて、思わず口をつぐんでしまう。一言で括らず、もっと豊かな表現でこのライブを大絶賛したいのに、どの言葉を選ぶことが適切なのか、私にはまだ分からなかった。

分からないまま、私は翌日の配信チケットを買っていた。もう一回観たい。その衝動を抑えきれなかった。普段は同じ公演を複数回観ることはないのだが、今回ばかりは買わずにはいられなかった。

翌日、パソコンの前に鎮座して配信を見る。正直内容はもう知っているし、前日ほど笑わないかなと思っていたけど、全然そんなことはなかった。同じところで笑ったし、むしろちょっとアドリブを入れていたりもするから、新しいところで笑ったり、前日との違いを見つけて驚いたりもした。日替わりキャストもいるので、その違いも新鮮だった。

それに配信はカメラが表情にぐっと寄ってくれるから、前日に感じ取れなかった微細な部分も読み取れて良い。東京03の飯塚さんコント中にすごい笑ってるなとか、吉住さんの切迫した表情が強烈すぎるなとか、その表情を見て顔色一つ変えないR-指定さんはどんな訓練を受けたんだろうか、とか。

普段はついつい片手間に配信を見てしまうこともあるのだけど、珍しくほとんど飽きることなく見終えた。3月26日まで配信されているアーカイブもちまちま見返している。ちなみに、Creepy Nutsや佐久間宣行さん、オードリーのラジオで裏話を聞いた後見るアーカイブは、また見方が変わる。この時あんな状態だったんだな、とか、じわじわと面白さが増す。

さて、正直今私は一言で、このライブをまとめたくて、括りたくて仕方がなくなっている。「なんと括っていいか、まだ分からない」というサブタイトルが付いているのに、なんて野暮なことをしようとしているんだろう。だけど、言いたい。

このライブは、「天才たちの最高傑作」だ。

……うん、なんて陳腐なんだろう。今の私じゃ、この感動を表現するに値しない。だからこそ、あなたのその目で、この感動を味わって欲しいのだ。

文/菜津紀

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