私はさとゆみさんを目指しません【さとゆみの今日もコレカラ/第387回】
いまから4年半前のことだ。わたしの講座を卒業してくれた人が、最終日にこんな文章をくれた。本人の許可を得て、紹介します。
「自分らしく生きよう、他人の目なんか気にしちゃダメだ!」
「そんなに考えすぎないで、自分の思うままに生きればいいんだよ!」といった言葉に、ときどき出会います。
私は、この言葉に何度か心を殺されかけました。
他者と関わる生き方を選び、何かを目指すと決めたなら、他者からの評価から逃れることはできません。一喜一憂するのも、繊細であることも許されないのか。みんな、そんなに強いのか。じゃあ、なぜ私はこんなに弱いんだろう? と。
さとゆみさんは、ご自身のことを「ツラの皮厚い族」とおっしゃるけれど、一方で、繊細でなければできない、他者との関わり方、お仕事の仕方をされています。(そのことは、この講義を通じて本当によくわかりました)。
強く、同時に、柔らかい。
利己的で欲深く、同時に、利他的で献身深い。
常に相手目線と自分目線が、仲良く寄り添って共存している。
思わず、矛盾しないのですか?と、先日質問してしまいました。
答えを待たずに私の中で勝手に暫定解を出すとしたら、自分の“北極星“がある人は「矛盾していても、矛盾しない」のではないでしょうか。
どちらに向かっていくか、の星がある人生は、すべての出来事を「過程や手段」にしてしまう強さを持っています。
私は、その強さがずっと欲しかったのです。
「他人の目を気にしちゃダメ」なのではなく、「どう見られたいか」を自分で選んでいい。
「考えすぎない」のではなく、むしろ、いつも「考えること」を自分に許していい。
今回の講義の最後、そんな風に思えた時、自分の中で何かが弾けました。
今、ずっと張っていた肩の力が抜けたような気がしています。
毎回の課題に対しての細やかなフィードバック、
「あー、やっちゃった」と思うことも、「こんなこともできないのか」と自分にがっかりすることも、他の人の原稿の出来の良さを見て、落ち込むこともありましたが、
私は一度も、傷つきませんでした。
傷つく必要がない、とわかっていたからです。
そういう空間を作ってくださったことを、本当に感謝しています。
半年間、ありがとうございました。
私はさとゆみさんを目指しません。別の北極星に向けて、さとゆみさんのように、着実に、したたかに、進んでいきます。
この文章を書いたのは、塚田智恵美さん。
当時、出版社の編集者をやめ、フリーのライターになって3年目だった彼女は、「私はさとゆみさんを目指しません」の宣言どおり、彼女らしさの触手をびよんと伸ばし、いまやあちこちから「塚田さんじゃなきゃ」と指名がかかる売れっ子である。
私は、自分のスケジュールが合わなかった仕事で、難易度の高いものに関しては、ほとんど彼女を推薦してきた。
編集者さんに彼女を紹介するとき、いつも言っていたのは「私の3倍くらい原稿がうまい人がいるんですよ」という言葉だ。最初のうち、それは冗談に受け止められるのだけれど、いざ彼女が仕事を終えたら、その編集者さんからめちゃくちゃ感謝の連絡がくる。
「インタビューも上手いし、原稿も上手い。ほんとにすごいライターさんだった」と喜ばれ、その後、私に仕事がくることはない。「これからも塚田さんにお願いすることにしました」と言われる率がただいまのところ100%である。
そんな彼女は、CORECOLORで連載をもってくれている。
ライターの人たちから「毎月楽しみにしている」と言われるのはもちろんのこと、うちのお母ちゃんまで「ちえみさんの原稿は、本当にいつもおもしろいねえ」と言っていて、ライター以外のファンもがっちり獲得している。
そういわれるたび、私は自分のことのように嬉しい。いや、どっちかというと、自分のこと以上に嬉しい。そうなの、ちえみ(塚田さん)、すごいでしょ! と、超にこにこしちゃう。
ちなみに、連載タイトル「欲深くてすみません」をつけたのは、私だ。もっとうまくなりたい、もっと書けるようになりたいということに関して、ちえみは強欲すぎるほど欲が深い。その強欲を、私は心の底から尊敬している。
『書く仕事がしたい』の最終章に出てくるライターさんのエピソードは、ちえみのことだ。こんなふうに書く仕事と向き合える人生は、きっと本当に楽しいだろうなと想像する。この仕事は、真剣にやればやるほど、人生が豊かになる仕事なのだと、ちえみを見ていると、思う。
そんなちえみが、今回CORECOLORのクラウドファンディングで、インタビュー取材についてのセミナーをしてくれます。
すでに100人を超える人が申し込んでくれているけれど、もっともっとたくさんの人に聞いてもらいたい。絶対に損させません(私ではなく、ちえみが)。さとゆみゼミの内部勉強会で、一度セミナーしてもらったところ、みんなが「もっと聞きたい!」と興奮したくらいなんですよ。
というわけで、今週末、土曜日の早朝7:30から8:00の時間で、X(Twitter)のさとゆみのスペースでプレトークしてもらいます。こちらは無料なので、ぜひ、耳だけでも聞きにきていただけたら嬉しいですー。
そして、さとゆみビジネスライティングゼミも、5期生を募集しています。塚田さんのように「さとゆみを目指すのではなく」、自分の北極星を見つけたい方を、お待ちしています。
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「あ、終わった」。その瞬間、ヒヨコのライター生命は尽きた(と思った)。
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24時間で消えるこの「今日もコレカラ」の1年分を1冊にまとめました。こちらのクラウドファンディングページでご購入いただけます。12月18日まで。他にも魅力的なリターンがたくさんあるので、ぜひご覧ください!