
見つめあうと素直におしゃべりできない 【さとゆみの今日もコレカラ/第688回】
あまり口数が多くない友達がいて、彼は「車を運転しているときが、一番リラックスして人と話せる」と言う。運転席と助手席。この横の関係で、しかも目を合わせて話さないですむ時が、一番、おしゃべりしやすいのだという。
私はインタビューの時、なるべくお相手の真正面の席に座らないようにしている。真正面の席は「対決のポジション」と言われていて、本音を話しにくいなんてことも聞く。たしかエビデンスもあったはず。
とはいえ、インタビューで真横に座るわけにはいかないので、角をはさんで座るとか、斜めの位置に座るなどすることが多い。
以前、アップルの日本支社にいた人から「上司との1on1を階段を上りながらしていた」と聞いたことがある。当時のアップルはオペラシティの49階から51階に入っていたのだけれど、自分も上司もトレランが趣味だったので、エレベーターを使わずに階段で通勤していたそうだ。そこで、1on1も会議室ではなく、階段でしようとなったらしい。ユニークだよね。
それで思い出したけれど、まだこんなに大御所になる前の村上春樹さんが、ジョン・アーヴィングのインタビューを申し込んだとき、「朝、セントラルパークを走っているから、一緒に走るならその時に話をしてもいいよ」と言われた逸話があったなあ。
最近ときどき息子が、自分の考えていることをぽつりぽつりと話してくれることがある。それが、きまって私がケータイゲームをしているときである。ゲームをしている私の隣に座って、自分もケータイをいじりながら話をする。
この時、私がゲームをやめてちゃんと話を聞こうとすると「やっぱいいや」といなくなることが多いから、ゲームをしながら話を聞いている。多分、この横並びが一番話をしやすいんだろうな。
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私たち姉妹は、妹が高校を卒業してからずうっと一緒に暮らしていた。部屋は狭い1DKに2人暮らし。もちろんそれぞれの部屋はなく、布団を2つ並べて寝ていた、何十年もの間。
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