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10年続けば奇跡。30年続けば伝説【さとゆみの今日もコレカラ/第727回】

おそようございます。偽アカウントが勃発して金融商品を売りつけるLINEグループに誘導している件の対応でアップが遅れました。みなさん、さとゆみの偽アカウントにお気をつけください。
アカウントは
satoyumiじゃなくて
satoyuamiになっているものが多いみたいです。ブロックしてお時間あれば通報いただけたら助かります。

さて。気を取り直して。

昨日は日本酒サロン「粋-sui」で一日ママの日だった。
その日本酒サロン「粋-sui」の店主でありライターの堀香織さんが、以前勤めていた日本酒バーが「あさくら」だ。京都随一の繁華街、木屋町で開業から20年。先月はその20周年パーティがあり、この先の未来を見据えクラウドファンディングも始まった。

私が好きな本『シェフを「つづける」ということ』(井川直子/ミシマ社)の帯にはこんな言葉が書かれている。
「10年続けば奇跡。30年続けば伝説」
一般的に、飲食店は1年以内に約30%、10年以内に約90%が廃業してしまうそうだ。だから20年を迎えた「あさくら」さんは、奇跡の10年を超え、伝説の30年に向かうその道のりのちょうど真ん中なのだなあと、クラウドファンディングのページを見ながら思っていた。

先日、お店にお邪魔した際に、朝倉さんに聞いてみた。
「20年の間に『ぼうず』の日ってありました?」
「ぼうず」というのは、お店にお客さまが一人も来ない日のことを指す。

知り合いの税理士さんに聞いたのだけれど、「決して売上が悪くなくても、ぼうずの日が一日あったら、心がぽきっと折れる人が多い」のだとか。だから、20年も続けてこられた朝倉さんはどうだったかなあと思って聞いたのだ。
「たくさんありましたよ」
と、朝倉さんは言った。お隣にいた奥様が
「お客さまが一人も来ないと、ああ、今日一日、この店は世界中の誰からも思い出されなかったんだなあと思って、悲しくなるよね」
と話す。

そんな心がぽっきり折れそうな夜を、朝倉さんはどんなふうに超えてきたのだろうと聞いたら「一日単位で考えないようにしているんです」とおっしゃった。「もっと長い目で見るんです」と。
これが「奇跡」を超え「伝説」になろうとしているお店の20年なのかと思った。

ライターもそうだし、それ以外の仕事もそうだと思う。ぽきっと折れそうになるとき、今ココにいる自分ではなく、ちょっと先の未来を見る。長い目で見る。私は今年ライター25年目だけれど、たしかに一日単位で考えたらしんどい日も絶望的な夜もあったよな。

私は朝倉さんと年齢が同じ。この歳になると、ひとつのことを長く続けることの難しさも想像できるようになってきた。

これからも長く長く、常連さんたち、これから常連になる人たちの大切な居場所であってくれますようにとの気持ちをこめて、そんな文章をクラウドファンディングのページに応援メッセージをお送りさせていただきました。京都にいらっしゃる日本酒&クラフトビール好きのみなさん、「粋-sui」と「あさくら」ぜひチェックしてくださいね。

伝説になるまであと10年。
さとゆみも、30周年まで、あと5年。
ともによき時間が流れますように。

【この記事をおすすめ】

脳内で考えていることは、耳から入ってきていないもの。声に出して初めて、インプットできる。

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