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メリハリはいらない? イラストレーターの日常とスケジュール管理【絵で食べていきたい/第15回】

リモートワークが増えて、家で仕事をする人も増えたと思います。それでもフリーランスで完全に自宅仕事の場合、どのように自己管理をしているのかと聞かれることがあります。今回は、フリーランスで絵の仕事をする人はどんな生活をしているのか、どんなことに気をつけているのか、その一例をあげてみました。

メリハリをつけるのは大変?

「自宅で仕事をする時、どうメリハリをつけていますか?」

フリーランスのイラストレーターをしていると、よく聞かれる言葉です。

しかし私は、メリハリをつけなくても問題はないと思っています。実際、朝起きたら洗面やゴミ出しぐらいはしますが、後はパソコンの電源を入れ、化粧もせず仕事をはじめます。一人暮らしでもあり、かなり気ままです。

フリーランスの場合、最終的に期日までに受けた仕事を納められれば、どんなにキッチリした生活をしていようがいまいが、関係ありません。いわゆる「コアタイム」もありません。

私の場合、午前中のほうが元気も集中力もあるので、朝起きてから昼ぐらいまでに、その日のタスクの6割ぐらいは終えるつもりで仕事をします。逆に深夜が一番集中できるという、夜型の人も多いでしょう。

SNS上では、早起きのフリーランスの友達が、早朝4時、5時に「おはよう」と投稿するのを見て、深夜組が「あっ、〇〇さんたちが起きてきちゃった! もう寝なくちゃ」と、入れ替わりで去ったりします。特に小さい子供がいると、夜は早めにネット上からいなくなり、その分早起きして、子供やパートナーが起きる前の静かな時間に仕事をはじめるという同業者も多くいます。

あるフリーランスイラストレーターの1日

このようにスケジュールは人それぞれで、さらに日によっても違いますが、例として私のよくある1日の流れを書いてみます。

・平均的な日(家での制作中心)

5時半~6時起床。身支度、ゴミ出し、運動など。その日のスケジュールやメールを確認して仕事開始。8時に朝食と家事。9時になったら前日に書いたメールを送信。昼頃まで仕事。昼食後仕事(このあたりから仕事の精度がじわじわと落ち、資料探しという名のネットサーフィンなどの寄り道が増える)。疲れたら買い物や散歩、昼寝。17時頃夕食。その後はだらだら仕事をしたりマンガを読んだり、ドラマや映画を観たり。風呂などすませて21~22時ごろ就寝。

・仕事が立て込んで忙しい日

5~6時起床。身支度して仕事をリストアップ。タイマー(後述)をかけて仕事。8時に朝食。そのまま仕事。昼食をとり、また仕事。辛くなってきたら昼寝。起きたらまた仕事。17時ごろ夕食。そのまま仕事、就寝(遅くても24時ごろには)。

・打ち合わせや取材のある日

6時ごろ起床。身支度や家事をしてメールとスケジュール確認。時間があればそのまま仕事、8時朝食。化粧や着替え、準備をして外出。打合せや取材後は、外でしかできない用事もまとめてすませる。急ぎの仕事がない日なら、そのままショッピングや外食することも。帰宅後ノートやメモを確認、決まったスケジュールなどはカレンダーに記入。今日の打合せや取材の相手に御礼や確認のメール。風呂などすませて就寝。

私の睡眠時間は長いほうだと思います。また週に2~3回、45分ぐらいのスロージョグや、部屋でできる筋トレを心がけています。このあたりの体調管理はまた別項で書きます。

さきほど「コアタイム」はない、と書きましたが、9時になったらメールを送るなど、依頼者とのやりとりは、一般的な勤務時間の範囲内におさまるように気をつけています。編集者さん、ライターさんには夜型も多いのですが、私がかなり朝型のため、先方の稼働時間に合わせるとこちらの業務に影響がでてしまうので、無理はしません。

オンとオフの切り替えについて

「メリハリをどうつけるか」という質問には、「オンとオフの区別をどうつけるか」という意味も含まれるようです。私は対外的には、「土日は休み」ということにしていますが、もちろん仕事をする時もあります。月曜の朝いちが締め切りという案件もよくあり、土日に制作をしないと間に合わない場合があるからです。

その代わり、平日に遊びの予定を入れることも多いです。自分一人やフリーランスの友人同士なら、わざわざ混雑している休日に出かけなくても、平日にゆったり遊べます。そんな日は「この日は外出していて連絡がつきにくい」と、やりとりしている依頼者へ事前に連絡をしておきます。

それでも平日を自主的に休みにした日は、スマホのメールが気になって時々チェックします。連絡が来たからと言ってすぐ対応しなくてはいけない訳ではありません。でも家に帰ったらメールの山、などという状況にびっくりしたくないのです。

こう書くと、オンオフの切り替えはあるようなないような、微妙な感じがするかもしれません。でも、もっと切り替えたいと思ったら、できることがあります。たとえば休みの間はメールのシステムを使って「〇日まで休みなので〇日以降にご連絡します」と自動返信する。問い合わせフォームにあらかじめ不在期間を書いておくこともできます。メールの署名欄に、営業時間や営業日を記載しておくのも、すっきりと休めるコツかもしれません。

どんなところで仕事をしているか

私の場合、制作のメインはデジタルなので、自室のパソコンデスクに向き合っている時間が一番長くなります。パソコンデスクの隣にもう1つ机があり、水彩などアナログ画材での制作や、パソコン以外の事務作業をします。仕事とリラックスの場所が一緒だとなんとなく息が詰まる気がするので、1LDKを借り、リビングやキッチンと、仕事の部屋を分けています。このリビングは梱包や立体物の制作など、床で広々と作業したい時にも使います。

家で仕事をすると、気がついたら洗濯物を入れたり、すきま時間に買い物や料理をしたりできるのでとても楽です。その分誘惑も多く、テレビはありませんがネットをダラダラ見たり、マンガを読んだり、突然衣替えをはじめてしまう日もあります。まさにメリハリのない生活ですが、最初に書いたように、締め切りに間に合えば全く問題ないと思っているので気にしません。

同業友人には「カフェで仕事をするとはかどる」と言う人も多くいます。家族と同居していると特にそうかもしれません。場所を変えて仕事モードに入るのです。

最近では、iPadなどのタブレットとアプリでラフから納品まで全て完了する人たちも増えました。すると旅先でも仕事ができるのです。私はそれがとてもうらやましく、海外旅行に合わせてiPadを購入しましたが、数日の旅行では結局メールの返信ぐらいしかしませんでした。帰国後はやはり慣れたパソコンで描くほうが楽なので、今のところタブレットはメールチェックや動画視聴、電子書籍を読む程度しか使っていません。いつか長期旅行をしながら、連載の仕事などもやってみたいです。

集中できる環境づくりとスケジュール管理の工夫

メリハリや切り替えにこだわる必要はないと思いますが、締め切りにはきちんと納品しなければなりません。締め切り前なのに集中できないといった場合の対策も、自分なりに考えています。

まず環境面では、仕事部屋をリラックススペースと分けて、あまり多くの情報が目に入らないようにして気が散るのを防ぐ。

それでもネットサーフィンなどしてしまう時は、通信ソフト(スカイプとかメッセンジャーの通話機能、作業中の通話に特化したアプリもあります)で、同じように仕事をしている仲間と雑談しながら作業することがあります。

雑談しながら仕事をすると言うと驚かれるかもしれませんが、私の場合、ペンを入れたり色を塗ったりという作業に限っては、会話をしていたほうが集中できます。SNSやオンライン漫画をうっかり読まずにすみ、かえって作業がはかどるのです(もちろん「どんな作業であれ、会話しながら絵は描けない」という人もいます)。

また、1日の作業が多い時は、作業をリストにして紙に書き出し、終わったら消していきます。普段はオンラインカレンダーにざっくりと締め切りだけ入力しているのですが、手で書き、消していくのが気持ちよくてやる気がでる上、どこまで進んだかが目に見えると焦らずにすむのです。

それでもいよいよ間に合わないという時には、先ほど書いたタイマーを利用して「ポモドーロ・テクニック」を実践します。これは25分作業をしたら5分休憩することを4セット繰り返すなど、集中とリラックスの時間を設定して、タイマーに知らせてもらう方法です。このテクニックのためのアプリや動画が色々でているのでそれを利用すれば簡単です。これは確実に仕事がはかどりますが、毎日そこまでキッチリしなくてもいいかなと思うのと、最終手段として奥の手を残しておきたいので、よほど追い込まれた時だけ使います。

こうして書いてみると、どれもささやかな工夫ですが、夏休みの宿題を最終日どころか登校日以降にやっていた私でも、フリーランスを続けられています。「自分以外の誰もやってくれない、やらなければお金は入らない」という状況になれば、意外となんとかするし、それができなければこの仕事は続きません。依頼されたものを予定通りに納めさえすれば、そのやり方は全て自由。そんな生活が「いいな」と思ったら、その人はフリーランス向きかもしれません。

文/白ふくろう舎

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