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求められる人の仕事の仕方【さとゆみの今日もコレカラ/第 169 回】

仕事がら、いろんな人のテープ起こしを見る。

書籍では出版社がプロに頼んだテープ起こしを用意してくれるけれど、webのインタビュー原稿だと自分でやってくださいねという媒体が多い。私は自分でテープ起こしはしないので、人にお願いしている。

クオリティはバラバラだ。

取材音声を聞き取ってワードに打ち込むだけでしょ?  誰でもできる仕事だと思うなかれ。このテープ起こしの精度によって、原稿の書きやすさも変わる。

過去に 20 人くらい、自分の知り合いにテープ起こしを頼んだことがある。その中に、圧倒的なクオリティで納品してくれる人が2人いた。そのうちの1人がさとゆみゼミの卒業生で、私はこれまで彼女に 50 本以上のテープ起こしを依頼している。

彼女はライター未経験、テープ起こしも未経験だったのだけど、非常にエレガントなテープ起こしをくれた。感激したので、以来、私が指名できる時は全て彼女に仕事をお願いしている。

彼女に初めてテープ起こしをお願いしたとき、私は「固有名詞が出てきたら、調べてフルネームにしてもらえるかな?」と、「変な日本語は整えてもらえると助かります」と伝えただけだったけれど、おそらくいろいろ調べてコトにあたってくれたのであろう。

この業界で「ケバ」と言われる「えー」とか「あのー」といった言葉は綺麗に削除されていたし(こういう言葉を削除することを「ケバをとる」という)、話し言葉にありがちな助詞が省略されている部分もちゃんと整型されていた。

私の仕事には、量子コンピューターや、最新 AI 技術、エネルギー関係といった専門的な用語が飛び交う取材もあるのだけれど、専門的な固有名詞には脚注が貼られている。彼女がリンクしてくれた参照先を、原稿を書くときに参考にすることも多い。

✳︎

昨夜は、そんな彼女の「テープ起こし勉強会」があった。さとゆみゼミ内で、彼女のテープ起こし方法を仲間にシェアしてくれる会だ。私が想像していた以上に、いろんな工夫を重ねてこのテープ起こしになっているのだとわかって、とても勉強になった。

さて、昨夜の講義は、「テープ起こしのやり方」についてのレクチャーであったけれど、終始通底していたのは「テープ起こしのあり方」であったと思う。

このテープ起こしがどのように原稿に作用するのか

どの部分の精度をあげれば原稿の出来に直結するのか

原稿を書きやすくするためには、何を落とし何を残すべきか

一貫して、哲学のある話だと感じた。

イソップ童話に登場するレンガ職人の話を思い出した。何のために仕事をするのか。その目的を考えられる人の仕事は強度が違う。

テープ起こしは多分、誰でもできる。特殊技能が必要なことではない。でも、彼女のようなテープ起こしは 100 人中、99 人ができない。

Notta 使ってますか?  LINE の CLOVA 使ってますか?  のような話は、明日すぐ役に立つけれど、明後日には役に立たなくなる可能性もある話だ。

でも彼女が話してくれたような本質的な思考は、何年経っても古びないし、どの職業にも持ち運びできる。彼女のような考え方ができれば、どんな仕事をしても引っ張りだこになるだろう。

そういえば、私が出会ったとき彼女は本業である人の秘書をしていたのだけれど、彼女が退職するとき、彼女の代わりに秘書が3人募集されたと聞いた。彼女の穴を埋めるには3人必要だったということだ。

おそらくその職場でも、彼女は私のテープ起こしのときのように、あらゆる 仕事に工夫をこらして精度の高いアウトプットをしてきたのだろうなと想像する。

昨夜レクチャーを聴きにきてくれた人たちは、ラッキーだったなと思う。そして私もラッキーだったなと思う。あらゆる職業に通じる非常に大切な姿勢を、私たちは彼女から学べた。ウサミ、ありがとうね。

(ところで、カセットテープを知らない人もきっと増えてきてるよね)

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