
この、普通で特別な【さとゆみの今日もコレカラ/第459回】
昨日は、CORECOLORで何度か取材させてもらった、アリス・ウォータースさんのドキュメンタリー映画『食べることは生きること』の上映会だった。
「オーガニックの母」とも言われるアリス。地産地消をモットーに、生産者から直接買い付ける食材で、毎日違うメニューの料理を出す。カリフォルニア・バークレーにある彼女のレストラン「シェ・パニース」は世界で最も予約のとれない店とも言われる。
昨日は昼夜2回、その彼女の取り組みを記録した映画を、約80人の人たちと一緒に見ることができた。そのうち半数は、シェ・パニーズの流れを汲むレストラン、ブラインド・ドンキーでのランチやディナーも一緒に。
舌で味わった彼女の思想を、映画でもう一度、たしかめるように味わう。
映画を観たというだけではなく、「映画を経験した」と感じるような、豊かな時間だった。
何を食べるか。どこで食べるか。誰と食べるか。
食べることはたしかに、生きることだ。
お腹いっぱいで、胸もいっぱいで、会場となった清澄白河のビルから帰宅しようとしたとき。
ケータイがぴろりんと鳴って、息子からLINEが入った。
「人形焼、いっぱい買ったから帰ったら食べていいよ
めっちゃ美味しい」
とだけ、書かれている。
そういえば、浅草で校外実習があると言って出ていったなと思い出す。
はたして家に帰ってみたら、相撲文字的なフォントででかでか「人形焼」と書かれた袋が3袋、ダイニングテーブルにのっていた。息子はもう、寝ている。
1袋にずいぶんと大きな人形焼が8つも入っている。が、すでに1袋は空になっていた。よっぽど美味しかったのだろうなと思って、ひとつ、いただく。
その人形焼は、とっても普通で、普通の人形焼の味がした。
この人形焼を友達と一緒に買ったであろう息子のことを想像してみる。きっと味見をしただろう。普段食べつけているものではないから、「初めて食べる味!」と興奮したかもしれない。美味しいな。家にも買って帰ろう。多分自分だけで1袋は食べちゃうだろうから、2袋、いや、母親の分も合わせて3袋。
そんなことを考えただろうか。
中学生の彼にとって「自分(や家族)が食べるもの」を、自分でお金を出して買う経験はそこまで多くない。
きっと、彼にとっての人形焼は、「中学時代、浅草で買った人形焼」として記憶されるのだろう。
もしくは、校外実習の記憶が、人形焼になるのかもしれない。
そう思ったら、このいたって普通の人形焼が、とても特別なものに思えてくる。
何を食べるかを自分で選ぶこと。
その土地に紐づく食べ物を食べること。
誰かにそれを食べさせたいと思うこと。
食べることは生きること。
ふと、映画の中のアリスのメッセージを思い出す。
我が家で起こった小さな小さな美味しい革命。
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食べることは、生きること。そこに関わっていきたい。
なんだか「旅」に似ているな、と思った。自由で気ままで冒険があるひとり旅。


