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この美しいリレーがいつまでも終わらないように【さとゆみの今日もコレカラ/第382回】

『書く仕事がしたい』と『本を出したい』の担当編集者りり子さんに、さとゆみゼミメンバーに向けてトークをしてもらったことがある。

たくさんの質問に答えてもらったのだけれど、そこで話しきれなかったことについて、後日りり子さんからメッセージをもらった。

内容は「本と読者の関係」について。以下、りり子さんの許可を得て、そのまま掲載させていただきます。

本を遺すのは読者である

昔、『いま、世界で読まれている105冊』という本をつくりました。英語からエスペラントまで、各国の言語や事情に通じる研究者、翻訳家、ジャーナリスト83人に依頼し、その土地で読まれている文学を紹介してもらう企画でした。結果として、63カ国の未邦訳本(当時)が集まった。なかには今大人気の『三体』もありました。

この本をつくったとき、はっきりとわかったことがあったんです。

私たちはよく「ネットの情報が全てじゃない」などとわかった風なことを言うが、実感のレベルではどこかしら「本当はネットであらゆる情報を得られる」と思っている。でも、違う。そのことがはっきりしたんです。

集まった本のなかには、ネットで情報を得られないどころか、政治的事情で現地でもなかなか入手できない本もあった。長年にわたって築いた個人ルートをたどり命懸けでようやく手にすることがかなうような閉じられた国家の本もあった。その国の言語で書かれた初の出版物という本もあった。

小手先のクリックでは辿り着けない本が世界にはたくさんあるんです。だけど、それらは確かに「在る」。知らない場所で、存在している。本だからです。本という形をもった物体だから存在しているんです。

考えました。そして気がついた。これって、そもそも文字は何のためにあるかって、話なんですよね。

文字があるのは、言葉が消えてしまわないように、形としてつなぎとめるためにある。遺すためにある。そこに筆記具があり、書き付ける物体(メディア)があれば、必ず文学が生まれる。さとゆみが言うところの「固体」の話と同じでしょうか。

太古、紙がなかった時代は、刻み込むだけでも苦労するような書き味最悪の岩だの、竹だの、甲骨だのに文字を刻み込みました。文字を刻むって、めっちゃ大変な、肉体的な労働だったと思う。でも、そうまでして残したいこと、伝えたいことがあった。だから形として残った。

紙ができてから印刷機が普及するまでは、写本して残し、広めた。こんなことはとてもじゃないけど、かなり必死で「(書き手が)伝えたい」と思い、「(受け手。つまり読者が)広めたい」と思わないと成り立たない。どうかしてる熱量みたいなものがないとできない手間だと思います。(あ、それでいま思ったけど、プラトンってたぶん元祖書籍ライターですよね。おもしろいな。これについては考えたい)

印刷機が普及する前の時代から「書物的なるもの」がつくられて、それが今も残っているのは、だから、残して広めたいと思った読者のおかげのはずです。読者がいたから数百年の時を超えて残ったんです。

でも、それって今もそんなに変わってないんじゃないのかな? 

本って、大のおとなが、その道のプロが寄り集まって、時間とお金をかけて必死でつくるんです。冷静になったら、相当どうかしてる光景ですよ。喋れば一瞬で済む話を、ああでもない、こうでもないって、みんなで考えて形にする。でも、逆説的だけど、だからこそ残るのだと思う。大人の必死の結晶だから、読者を動かすのだと思う。もっと言えば、そうでないものは大して残らない。一年も経てば忘れ去られてしまう。だから私は、真剣につくられた本というものが好きなんだと思う。

私、重版のたびに、思い浮かべる映像があるんですよね。太平洋で、数千の魚を産卵する魚のイメージ。ぶわっと、大海にばら撒かれた卵。あれ、本みたいだなと思うんです。数千、産み落とされますよね。でもたいていは死ぬ。ほんの数匹が成長して、また産卵し、次の時代につながっていく。

本も同じです。数千部、増刷した。その冊数だけのその本が、どこかの誰かの書棚でひっそりと生き残れる可能性が増えた。新たな数千の可能性ができた。うち、2冊か3冊は、その人が死んでも、古書店に売られて、さらに次の世代に残るかもしれない。

本が出たあと、著者や編集者にできることって、産卵回数を増やす(重版回数を増やす)努力だけれども、でもそこまでしかできないんです。その後、その卵を次の世代に継いでいくのは、その本を深く読み、愛し、大切に書棚に残し続けてくれた読者なんですよね。

本を遺すのは読者である。

読者はリレーの最終走者じゃない。次の読者につないでくれるのが読者なんです。この美しいリレーがいつまでも終わらないように。

(というわけで、『本を出したい』のこと、ぜひ、話題にしていただけたら嬉しいです。そこ?!)

ありがとうございました。

自分の好きなことを書くのは楽しい。自分の考えでZINEを作るのも楽しい。

でも、こんなふうに一緒にああでもない、こうでもないと話しながら、ともに本作りをしてくれる編集者さんとの仕事は、何にも変え難い出版の醍醐味だと思います。私が、「編集者さんのいる仕事」にこだわる理由もここにあります。

そんな、私にとって、大切なパートナーであるりり子さんと一緒に、『書く仕事がしたい』にまつわる2つのイベント? をします。

ひとつは、『書く仕事がしたい』を丸一日かけて解説する、超集中一日ライティング講座。会場のお席はもう満席なのですが、アーカイブを販売します。いま、「面白い原稿を書こう」という回が一番売れているのだけれど、私のイチオシは「取材」の仕方と「企画」の講義。この2つが、今後ライターとして生き残れるかどうかの鍵を握ると思うので。あとは、長くライターを続けるための話。ぜひチェックしてみてください。

もうひとつは、『書く仕事がしたい』の読書会。いま、CORECOLORでチャレンジしているクラウドファンディングに、りり子さんがご協力くださることになりました。来年2/25、さとゆみの誕生日のランチタイム、さとゆみが行きつけのワイン食堂にて、りり子さんと一緒に『書く仕事がしたい』の読書会をします。

ワイン飲みながら(もちろんノンアルでも!)書く仕事について、みんなで語り合いませんか?

こちら、今日の朝9時からクラウドファンディングにて販売いたします。こちらもよろしければぜひ、チェックしてくださいませ(9:17追記 すみません、完売してしまいました)。

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