
お土産を渡す【さとゆみの今日もコレカラ/第492回】
尊敬するライターさんにインタビューをさせてもらう機会が続いた。
その3人のうち3人ともが、同じことを言っていたのが、「取材相手に、お土産を渡してくることを意識している」だった。
お土産といっても、菓子折りを持っていくとか、そういうことではない。
3人が言っていたのは、取材を通して「相手が考えたことがない問いをプレゼントする」とか「その人が、これまでできなかった言語化を手伝う」とか、そういう意味だ。
新しい問いや言語化のお手伝いは、そのまま原稿のクオリティやオリジナリティに直結する。「お土産を渡す」精神は、彼女たちの原稿の素晴らしさの要因でもあるだろう。
だけど、それだけではない。
「取材相手から何かもらうだけではなく、自分も何かを渡そうとする」態度そのものが、彼女たちが選ばれる理由でもあると思った。
私は彼女たちのような良い取材ができているか自信がないけれど、そういえばライター新人時代から意識してきたことがあったと気づいた。
ヘアライターをしていたころ。月に30軒、40軒と美容院に打ち合わせに行くのだけれど、そのときに客目線で気づいたことをなるべくお伝えするようにしてきた。
たとえば、シャンプー台に横になると気づく換気扇の汚れ。女性トイレに飾られた造花にうっすらつもった埃。美容院の外階段が滑りやすくて危険なこと、ホームページのリンクが1箇所切れていること、ブログに書かれた文章の漢字が間違っていましたよ……などなど。
小姑かと言わんばかりの細かさで(小姑のみなさん、ごめんなさい)、気づいたことはなるべく伝えるようにした。
チクり魔だと思っていた人もいたかもしれない。でも、ほとんどの美容院では、喜んでもらえた。社長に呼び出され、経営会議に出席して気づいたことを伝えてほしいと言われたことも、一度や二度ではなかった。
あの頃は、新人一年目の自分でもできることがないかと必死だった。そして新人でも、誰かにお土産を渡せること、たしかにあったなあと思い出す。
いま、私、誰かにお土産を、渡せているかな。
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