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リスキリングは、まだ見ぬ自分に出会うチャンス。『AI時代を生き抜くということChatGPTとリスキリング』

私は今、38歳で2歳の息子を育てている。「どんな40代にしようか?」と、今後のキャリアを考えられる本を探していた。そんなとき「この本、ピッタリだと思うよ」と尊敬する仕事の先輩に勧められ、『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』を手にとった。著者の石角友愛さんはハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得後、Googleへ。現在は会社経営をしながら3人の子どもを育てる母でもある。面白そう! 前のめりで読み始めた。

彼女はいう。

定期的にリスキリングしないと、これからの時代は生き残れない。
『4to40』のキャリア時代が終わり、『4to4』の時代に突入する。

つまり「大学で4年間教育を受けて40年働く。そして60歳で引退」の時代から「4年間学んだ知識で4年働く」モデルにガラッと変化する。リスキリング(学び直し)してスキルアップし、また働く。それを繰り返していくと「学びのプロ」、そして「変化に適応するプロ」になっていくというのだ。

この本を読んで驚いた。他人事だと思っていた「リスキリング」を、私は知らず知らずのうちにやっていたと気づいたのだ。最近だと、私は息子の妊娠中から「産んでからの10年間」について考え、1歳になったときにライティングの勉強を始めた。提出課題に取り組む時間を確保するために、シッターさんをお願いしたこともある。思わぬ出費に「この時間を費やし課題原稿を書いても、1円にもならないのに大丈夫かな」と思ったときもあった。しかし、そのおかげで昨年ライターデビューし、先月からはWebメディアで短期連載もスタートした。

妊娠前からフリーランスだった私。ライティングの勉強を始めた理由は、「何か変化しなきゃ!」と思っていたからだ。働き方を変えずに子育てを始めたら、収入も産前と同じくらいを目指すだろう。でも、自分に使える時間が減るのに現状維持を目指したら、仕事はきっと少しずつ目減りしていくだろうな。自分の状況を客観的に見て、そう感じていた。

石角さんによると、リスキリングは気合と根性で行うものではないし、新しい分野を勉強すればいいわけでもない。「どの時間帯にリスキリングするか」といった、今ある自分の時間の使い方を変化させることも重要だという。

私自身、7月から新しく2つの習慣を取り入れ、仕事の効率化が進んだのを実感している。

1つ目は、書く仕事を増やすために「シェアオフィス」を契約したこと。

今は、1時間空いたらシェアオフィスに出勤している。家だと集中力が続かず、ついダラダラしてしまっていたが、その時間が無くなった。貸出モニターを使うことで更に仕事が捗り、体感では2〜3倍処理速度が変化した。

2つ目は、「今月の目標を達成するために、今日やるべき3つのToDo」を朝7時から8分間で書き出すことをやり始めた。

仕事仲間と毎日Zoomを繋ぎ、自分の課題を各自で書き出す。特に会話するわけではないが、この8分間の費用対効果は計り知れない。たまに寝坊したときは、午前中のできるだけ早い時間に携帯で8分タイマーをかけ、自分の思考と仕事の整理をしている。

結果的にこの2つの習慣は、私の時間の使い方を大きく変化させた。

自分の思考に潜っていくような集中力が必要な作業を「ディープワーク」と呼ぶそうだ。私はこの力を身につけたいと思い、この文章は一切の外的介入を遮断して書いてみた。やってみると、一息つくタイミングでつい携帯を見ようとする自分がいて驚いた。もしかしたら自分では集中しているつもりだが、日々、すごく効率の悪い仕事の仕方をしていたのかも? これを機に、1日のスケジュールの立て方も見直した。午前中に打合せを入れがちだったが、できるだけ午後に。午前は、執筆や仕事のプランニングといった一人で没頭し、集中する作業に変えた。

2023年9~10月号のハーバード・ビジネス・レビューでは、偶然にも「Reskilling in the age of AI(AI時代のリスキリング)」という記事が特集されていました。そこには「スキルの平均的な半減期は今や5年以下であり、一部の技術分野では2年半にまで短縮されている」と書かれていました。

スキルの半減期が2〜5年なら、息子が大学を卒業するまでの20年間に、私には少なくとも4回「私にはこんなスキルがある」という鎧を脱ぎ、成長するチャンスがある。それにより、まだ見ぬ自分に出逢えると思うと、めちゃくちゃワクワクする!

子育てをしながら、息子には「いろんな世界を見て、触れて、経験して欲しい」と思い、一緒に旅に出て、多種多様な大人に会わせてきた。でも、それだけでは何かが足りないと感じていた。この本を読み、漠然とした不安が消えた。

なぜか。

20年後、息子が社会人になるとき、どんな新しい職業が登場しているかはわからない。もしかしたら、「社会人」という概念ごと過去のものかもしれない。どんな教育をしたら、将来生き残れる人材になるのか想像できず不安だった。しかし、親がリスキリングし続け、バージョンアップしていく姿勢を子どもに見せ続けることはできる。それが「主体性を持った人が生き残る」と言われるAI時代を生きる子どもたちに、親が与えられる教育なのではないだろうか。

私は、この本の「あとがき」が大好きだ。

リスキリングをした先に自分が思い描いている人生が待っているかどうかは、やってみないとわかりません。しかし、今の自分にその意欲や能力、チャンスや余裕があるのであれば、後はやるかやらないかを決めて、腹をくくるだけです。

この一節が特に好きで、何度も声に出して読んだ。私も石角さんのように「自分の人生をこうするんだ!」と自ら旗を立て、覚悟を決めて、進もうと思う。

自分が変化し続け、いつまでもフットワーク軽くフラットな心をもつ私でありたい。

文/本間 友子

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