
お金をうまくつかいたい! フリーランス絵描きのお金のかけどころ【絵で食べていきたい/第36回】
この連載では絵で食べていくため、お金を稼ぐ方法に注目してきました。しかし、長く絵で食べ続けている人、大きな売上げをあげている人は、稼ぐのと同じぐらいにお金の「つかい方」がうまいと感じます。今回はお金のつかいどころについて考えます。
フリーランスイラストレーターのお金のつかいどころ
「息をするように貯金する」。これは以前トークイベントで、私自身について語った際に、ふと口から出た言葉です。買い物ひとつでも、高くて良いのは当たり前。価値あるものをどれだけ安く買えるか、無駄な出費をどれだけ減らせるか。そこに価値と楽しみを求めてしまう性分です。それだけにお金を払うことには慎重で、まとまった金額になるほど勇気がいります。そんな私が「絵で食べていく」ためにつかってきたお金は主に下記の2つです。
1:設備投資(環境や道具など)
2:自己投資(学びなど)
この他にも、宣伝広告費(個展やイベント、ホームページの外注費)や営業費などがありますが、今回は割愛します。
以下、ひとつずつ説明します。
1:設備投資(環境や道具など)
職業がイラストレーター(兼マンガ家)なので、少しずつ制作に必要な環境や道具を揃えてきました。大きめの投資としては、
・パソコン・ソフト・タブレット・スキャナー等
があります。また、1回に支払う額は大きくなくても、資料や技法の本などにはあまりお金を惜しまないようにしています(借りられる場合は図書館も利用します)。
一番思い切った設備投資は、実家を出て賃貸で一人暮らしをはじめたことかもしれません。
23区の駅から徒歩圏、広めの1LDKは、私にとっては贅沢です。しかし、家賃分の収入を安定して確保できるめどがついた頃に引っ越しました。都心の打ち合わせなどに出やすくなっただけでなく、全ての生活を絵の収入で賄うという気持ちの支えになっています。
2:自己投資(技術や知識の学びなど)
各種の講座や資格の取得など、学びと成長のための投資です。これまで受けた講座や資格試験で、10万円以上支払ったのはこのあたりです。
・マンガのネーム講座
・ビジネスライティングゼミ
金額で区切ると思ったより少ないのですが、その他に下記の単発や短期講座を多く受けていました。オンライン、対面ともに、無料のものもありました。
・デッサン教室・キャラクターの描き方・ストーリー作り・ライティング・ドローイング
・フォトレッスン・英会話
・プレスリリース講座・ファイナンシャルプランナー相談会
・著作権等の基礎講座や資格試験・確定申告の基礎セミナー
トータルすればそれなりの額かもしれませんが、そこまでお金をかけなくても学べるチャンスは多いということです。また、イラストやマンガの技術以外に、経理や法律、営業についても必要に応じて学んでいます。
お金をつかう際に大事にしていること
最初に書いたように、私はお金をつかうのに勇気がいるタイプです。そのため、まとまった出費をする前にはかなり検討します。その際に大事にしているのは、たとえば次のようなことです。
1:リターン目標を決める
2:自分に自信がつくか
3:払っただけで満足しないか
これもひとつずつ説明します。
1:リターン目標を決める
この金額を払うことで、何を手に入れるか、目標を事前に明確にしておきます。
以前、3ヶ月程のマンガネーム講座を受ける前に書いたメモがあります。気恥ずかしいですが以下にそのまま公開します。メモのタイトルは「講座を受ける理由」で、つまりこれらが「リターン目標」です。
・時間中は講座に拘束され、その時間は確実に手を動かし学べる
・自信のなかった自己流のネーム、コマ割に理論を学んで裏付けをする
・迷いの時間をなくしスピードアップ
・マンガの技術アップ
・新たな人々との出会い(必要なら)
・広告マンガ、原作付きマンガをより面白くアレンジし読ませるマンガにする
・女性誌、コミックエッセイなど可能性の提示
・自分の強みをプロの目で判断してもらう
かなり欲張っていますが、ここまで得られれば当時20万弱の受講料も払う価値があると思い、受講しました。逆に言えば、ここまでのリターンを目指せそうな講師や授業内容だと判断したから申し込んだのです。そのために主催の会社や講師の先生はもちろん、卒業生の感想だけでなく現在のプロフィールも調べました。
このリターン目標は、受講している間の指針にもなります。これだけの成果を得たければ、こちらもただ「受けたらいいことがあるはず」と満足してはいられません。課題を全て提出することはもちろん、クラス終了後も時間をとってもらえれば必ず質問し、課題以外の自主制作も講評してもらいました。結果として払った金額以上の成果を得たと思います。
2:自分に自信がつくか
「自分が持っていないものを増やすための投資」に対し、「自分に欠けている部分を補い、自信をつけるための投資」をすることもあります。0を1にするのではなく、マイナスを0にするイメージが近いでしょうか。私は多くのことを自己流でなんとかしがちです。ある分野で経験を積んで、人に教えたり意見を発表したりする機会をもらっても、自己流だから人に教えるようなことではない、と尻込みしてしまいます。そんな時、少しでも学んでおけば、せっかくのチャンスをふいにせずにすみ、相手にも誠実でいられると思うのです。たとえば料理のブログをはじめた頃には、写真撮影の短期レッスンを受けました。また、この連載をはじめてから、著作権についての資格試験を受けたのも、自信をもって原稿を書くためです。
3:払っただけで満足しないか
特に「モノ」を買う時に気をつけていることです。高額なソフトなどを買っただけでつかいこなせず放置してしまわないか。当然ながら、道具を買っただけで絵はうまくなりません。子供の頃、「絶対やるから!」と親に泣きついて通信添削の教材を買ってもらっては山積みにしていた私です。それがわかっていてもついついスペックの高いものに手を出したくなるので、時には私のことをよく知っている友人にも相談します。
ちなみに過去の経験から、「これを買ったら素敵なことができる」と夢みた時に失敗する率が高く、「これがないとどうしようもない」と必要に迫られて買ったものは、だいたい無駄になりません。
改めて自分のお金のつかい方を振り返ると、大きくお金を回している人たちに比べるとやはり小ぢんまりとしています。友人の中には、常にローンを組んでは新しいことにチャレンジし続けている猛者もいます。本人は「計画性がない」と謙遜しますが、成果はしっかりあげていますし、その方がやる気になるのだと思います。これは性分なので、どちらが良いとは言えません。
ただ、不思議なことに、私程度の投資でも、まとまったお金を払った後には、予想外のチャンスが舞い込むことがよくあります。「経済を回す」という言葉があるように、お金も貯め込むだけではうまく活かせないのかもしれません。できるだけ無駄なく、でも必要な時には思い切って、うまくお金を活かしていけたらいいなと思います。
文/白ふくろう舎
【お知らせとお詫び】
この連載に加筆修正した書籍『絵で食べていきたい!』(弘文堂)第 1 刷(2024 年 12 月 15 日発行)に、修正を要する表現がございました。 下記URLの通り変更いただけますよう、お詫びと共に、お願い申し上げます。
正誤表 https://hondana-storage.s3.amazonaws.com/83/files/85018_1.pdf
書籍『絵で食べていきたい!』は、こちらからご購入いただけます。

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