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「ご苦労さまでした」を言う前に。緊急開催!『鎌倉殿の13人』ファンミーティング

人生で初めての「ファンミーティング」に参加してきた。今年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』のファンミーティング。ただのイベントではない、「緊急開催!」と銘打たれた最終回目前(最終回の放送は12/18(日)予定、あと2回!)。主演の小栗旬さんはじめ、新垣結衣さん、坂口健太郎さんなどの超豪華キャストが集結する、視聴者垂涎のファンミーティングだ。

(以下、一部ネタバレを含みます)


『鎌倉殿の13人』は三谷幸喜さんが脚本を執筆。鎌倉幕府を支えた北条氏の2代目執権、北条義時を主人公にした「予測不能エンターテインメント」な大河ドラマだ。伊豆の弱小豪族の次男坊に過ぎなかった義時が、源頼朝(演じるは大泉洋さん)と出会い、さまざまな悲喜劇を経て権力の中枢にのぼり詰めていく姿を描く。物語の前半では、個性的な周囲の人物に振り回されっぱなしの天然キャラだったのが、「鎌倉と北条を守る」ためにどんどんとダークサイドに落ちていく主人公義時。毎週毎週、人気者の誰かが陥れられ、死んでいく。親しい仲間でも、身内だとしても容赦はしない。「義時って……どうやって死ぬの?(まともな死に方できないよね)」が、ここまで並走してきた視聴者の最大の関心ごとで、共通の想いだろう。三谷さんご自身も、インタビューで「大河ドラマの主人公にはないラスト」と仰っていた。最終回が……怖い!

この2ヶ月、都内近郊で開催されるイベントに2回連続落選し、私は気落ちしていた。ドラマの盛り上がりにあわせ、年間を通してすでに40回近く開催されているという「鎌倉殿」関連の全国各地のイベントは、当選確率がとんでもなく低そう。「今回も無理だろうな〜」。外れたときのショックを和らげるため、自己防衛しながらこのファンミーティングに応募した。しかも今回はNHKホール、このタイミングでキャストが一堂に会する。なるべく考えないように、でも結果が気になってチラチラとメールを覗きに行く日々。「当選」の文字を目にしたときは声が出た。今年の運はここで使い果たしたな。でももう年末だから、楽しんできてもバチは当たらないはず!

入場整理券。当選した人に届く神チケット

12/7(水)、NHKホールは静かな熱気に包まれていた。幅広い年齢層の男女が、目を輝かせてキャストの登場を待ち構えている。きっとみんな、毎週日曜20時には正座してリアルタイム視聴していたり、次の日にはNHK+で見返していたり、公式ガイドブックに付箋を貼って読み込んでいたり、感想絵(#殿絵)をSNSにアップしている武衛たち(鎌倉殿に出てくる、「仲間」を意味するワード)なんだろうな。いざ、鎌倉殿の世界へともに参ろうぞ。

夢のような2時間は、司会の迫田孝也さん(頼朝の弟役)、赤江珠緒さん(ファン代表)の登場から始まった。我々は4万通の応募者から選ばれた3,000人であるらしい。小栗旬さん自らが、プロデューサーに直訴してこの緊急開催が実現したとのこと。義時……仕事ができるヤツ。(失礼)

3階席からでも、舞台奥に掲げられた大きなモニターにキャストの表情などが映されるので快適だ。が、キャストの方々のスタイルの良さは、遠目だからこそより実感できる。小栗さんも、新垣さんも、坂口さんも、みんなみんな信じられないくらい8頭身以上。「顔ちっちゃ!」を心の中で何度も叫ぶ。

キャストのトークタイムは、小栗さんに加えて、物語の前半戦を彩った方々がまず登場。新垣さん(義時の妻役)、坂口さん(義時の長男役)、梶原善さん(暗殺者の善児役)、芹澤興人さん(新垣さんの前夫役)が、撮影時の思いやエピソードを和気藹々と語ってくれる。作品とキャラクターへの深い理解が伝わってくるお話の数々に、「うんうん、これが聞きたかった」と頷かずにはいられない。小栗さん、坂口さん以外は物語の中ではすでに故人。クランクアップすると脚本は渡されないので(梶原さんだけは、三谷さんに頼んで最終回までの脚本をもらっていたことが最後に明かされた!)、イチ視聴者として物語の行方を見守っているようだが、役を離れてもなお当時を熱く語る姿に感動する。衣装だけではなく、心まで黒に染まってしまった義時が悲しい、という新垣さん。もしも八重さん(新垣さんの役名)が生きていたら、義時はどこかで踏みとどまっていたかもしれないね。でもそうではないからこそ、この物語は無情にも素晴らしく面白いんだよな……。

八重さんによる、ナマ「小四郎殿、ご苦労さまでございました。お帰りなさいませ」も聞かせていただき、フーッ(嘆息)、拍手喝采。

殺された人(迫田さん、芹澤さん)、子供を殺された人(新垣さん)、殺した人(梶原さん)が小栗さんを中心に一緒にワイワイしているのは、パラレルワールドに迷い込んだような、でも鎌倉殿の物語を象徴する人選だった。

続いて、オーケストラによる生演奏タイム。鎌倉殿のオープニングテーマ曲は、今年の甲子園でガンガン演奏されていた人気曲。作曲家のエバン・コールさん自らが指揮を執る演奏が聞けたのは、かなり貴重な機会だっただろう。鎌倉武士たちが目指す「新世界」を表現した、猛々しさと繊細さをあわせもつ印象的なメロディーにうっとりする。そして男性コーラスの美しく物哀しい響きが、悲壮なクライマックスを暗示させる。義時……。

トークタイム後半は、金子大地さん(2代目鎌倉殿、源頼家役)と柿澤勇人さん(3代目鎌倉殿、源実朝役)が登場。小栗さん、坂口さんも加わり、眩しすぎるイケメン揃いにオペラグラスを持つ手が忙しい。どうしてそんなにお肌がスベスベなの? 可愛くてごめんだよ?

ここも殺された人、殺した人(間接的に)の組み合わせ。それぞれ壮絶な最期を遂げた金子さんと柿澤さんを、小栗さんは絶賛する。歴史的に有名すぎる「鎌倉殿」を大河ドラマで演じるプレッシャーは、若いお二人にとって物凄かったはず。そこを労う小栗さんの包容力に改めて感じ入る。義時、いや小栗さん、マジですごい人だ。「座長の重圧は現場の方々のおかげであまり感じることがなくやり切れた」という言葉も、本音もあるだろうが周囲への気遣いありきでカッコいい!

最後はキャスト全員が横に並び、一言ずつご挨拶。「歌えるキャストが集結しているドラマなので、いつか歌付きのファンミーティングを東京ドームでやりたいです」。小栗さん、その言葉がどれだけの武衛たちに未来への希望をもたらしたか。物語は終わったとしても、そんな夢のようなイベントが本当に開催されるのならば。伝説は続く。

『鎌倉殿の13人』への感謝とリスペクト。キャストそれぞれの心のこもったメッセージに、「ありがとうございます」とこちらが深々と頭を下げた。一年間、こんなにハラハラして、ドキドキして、笑えて(暗くて重い展開の中にも、三谷さん脚本ならではの笑いが随所に散りばめられている)、泣けて、毎週日曜日に緊張感を与えてくれた作品をありがとうございます。一つの作品に出会えた感謝の気持ちを、お互いに伝え合うのがファンミーティングというものなんだな。理解した! 三谷さん、キャストの皆さま、制作スタッフの皆さま、一緒に盛り上がってきた武衛たち、本当にありがとうございました。

ラストを見届ける覚悟、できました。何があろうとも、リアルタイムで観るべきなんだろうな。それが私にできる唯一の恩返しだ。御恩と奉公、鎌倉武士の基本だからね。

「ありがとう」はたくさん伝えたけれど、まだ言えていない言葉がある。義時と小栗さんに、心からの「ご苦労さまでした」を伝えられるまで、あと2回。いざ、鎌倉!

文/佐々木みちえ

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