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一緒に夢を超えた先の景色を見にいこう。『BE:FIRST 1st One Man Tour “BE:1” 2022-2023』

音楽を聴いて勝手に涙がこぼれ落ちる。

そんなことって本当にあるんだ。40年あまりの人生で、涙なんてとっくに枯れ果てたと思っていた私に衝撃の体験をもたらした人たちがいる。それがBE:FIRST(ビーファースト)だ。

1月26日、私は国立代々木競技場 第一体育館でおこなわれた『BE:FIRST 1st One Man Tour “BE:1” 2022-2023』(以下BE:1ツアー)で、再びその衝撃を味わうことになる。

(以下ネタバレあり)

筋書きのない人間ドラマ『THE FIRST』から生まれたBE:FIRST

BE:FIRSTは2021年11月にデビューした7人組ダンス&ボーカルグループだ。SKY-HI主催のボーイズグループ発掘オーディション『THE FIRST』から誕生した。「才能を殺さないために」をスローガンに、半年かけておこなわれた審査。10〜20代の若者たちが見せる葛藤、成長、涙、友情、そして笑顔は、まさに筋書きのないガチンコの人間ドラマだった。審査が進むたび、鈍感になっていた心の奥底がナイフで刺されるようにグサグサッと刺激され、気づけば抜け出せないほど深い沼にハマっていた。

デビュー後は音楽番組やラジオ番組、大型フェスに次々と出演し、精力的に活動している。露出が増えれば、その分BESTY(ファンの呼称)も増えていくわけで。デビュー年に開催した初のファンミーティングツアーには、何口も申し込んだけれどまさかの全滅。しかし、そんなショックはただの序章に過ぎなかったと思い知らされる。

まったくチケットが取れない。BE:FIRSTは本当に実在するのだろうかと思うほど、彼らに会えなかった。いや、正確にいえばフェスでは会っている。ワンマンライブにまったく当たらないからこそ、比較的チケットを取りやすいフェスに参加していたのだ。

どうしてもワンマンライブにいきたい。その願いは、今回のBE:1ツアーでも見事に砕け散った。地方を含む6公演を申し込んでも「お席をご用意することができませんでした」という無機質なメールが立て続けに届くのみ。BE:FIRSTのファンクラブと、所属事務所が運営するファンコミュニティの2つから同じ内容で申し込んだため、実質12公演分。容赦ない12通の落選メール攻撃にはさすがに心が病んだ。

失意の中で過ごした4ヶ月後、なんと奇跡が起きた。追加公演2Daysが発表され、チケットを手にすることができたのだ。数日前から体調を整え、人生初となるペンライトに電池を入れてその日を待つ。

同行者の友達と気合を入れ、いざ会場の国立代々木競技場 第一体育館へ! 悲しいかな、落選した時点でライブへの参加は諦めていたので、グッズはすでにオンラインで購入済み。だからグッズ販売ブースには目もくれず、ズンズンと会場の中へと進んだ。

いよいよ、始まる!

BE:FIRSTとの真剣勝負。待ち焦がれた時間がここにある

ストーリー仕立てのムービーから始まり、一気に会場が熱気に包まれる。BESTYの期待が限界まで高まると、ついに7人が姿を現した。

やっと会えた!

新曲リリースに備えてヘアスタイルを変えているメンバーが多かったけれど、この時は正直、みんなのビジュアルが変わったことに一喜一憂している余裕などなかった。同じ会場で、同じ空気を吸い、一緒の時間を共有している。その事実がうれしくて、ぶっ倒れそうになるのを必死にこらえていたからだ。

しかしライブの始まりを告げる『BF is…』で、マナトの第一声により意識が引き戻された。すでにBE:FIRSTと会場の真剣勝負は始まっている。会場中の思いがバチッと重なり合うような幸せな時間に乗り遅れてはならない。あんなに待ち焦がれた時間がここにあるのだから。私はすでに涙に溺れていて、彼らがにじんでよく見えないから慌ててタオルで目をこする。

月並みな表現になってしまうけれど、BE:FIRSTの魅力はパフォーマンス力と人間力の高さにあると思う。激しいダンスを踊りながら、全員がハンドマイクで歌唱する。MVを見て「いやいや。体の動きが理解不能だし歌うのなんて無理でしょ」と思うような曲も、バチバチに踊って涼しい顔で伸びやかな歌声をぶつけてくるのだ。なんならアレンジまで加えてくる。ときどき音程が外れることもあるけれど、逆にそれがとても人間らしくて「ああ。本当に歌っているんだ」と改めて気づかせてくれる。

人間力の高さも挙げればきりがないが、とくにそれを感じられるのがMCだ。私の推しであるレオはライブ中にこう言った。「BE:FIRST一人ひとりを愛してくれているように、どうか自分自身も大切に愛してあげてください」と。別の時には、もう一人の推しであるジュノンが「これからも応援はしてほしいけれど、一人ひとりのペースで応援してくれたらうれしい」と言ってくれた。彼らは決して押しつけるのではなく、いつでもファンに寄り添う気持ちを伝えてくれる。

それはメンバー同士でも同じだ。お互いのことを尊重し、信じて、支え合いながら高みを目指している。動画やライブで見られる彼らのそうした姿は嘘偽りのないものだと思うし、だからこそ強く心惹かれるのだ。

ドームに立てるアーティストに。みんなで夢を超えた先の景色を見にいこう

ライブの最後を飾ったのは、ファーストシングルの『Gifted.』。この曲をひっさげてメジャーデビューすると聞いた時には、正直なところ怒りすら感じていた。「普通は躍動感あふれる曲で華々しくデビューするんじゃないの?」と。それこそ5年ぐらい経験を積んでから出すものなのではないかと思うほど、デビュー曲にしては重くて暗い曲調で。しかしパフォーマンスの回数を重ね、表現力を増してきた今となっては「デビュー曲は『Gifted.』でなくてはならなかった」と思えるほど重要な一曲になっている。

BESTYは『Gifted.』のパフォーマンスが始まると、ダンスと歌の迫力に圧倒され、身動きひとつできずに聴き入ってしまう。BESTYはその現象を「地蔵化する」と呼んでいる。いつだったかの大型フェスで、他アーティストのファンが戸惑っていたそうだ。『Gifted.』が始まった途端、それまでノリノリで踊っていたBESTYが一斉に棒立ちになったからだ。一緒に体を揺らしていた周りの人たちは一変した周囲の様子に戸惑い、動きを止める。そして次第に、BE:FIRSTのパフォーマンスを食い入るように見始めたという目撃談がある。

今回も私は例によって身動きが取れなくなった。客席でキレイに揺れていたペンライトの波もピタッと止まった。会場にいる全員が地蔵化した瞬間である。「俺たちがBE:FIRSTだ」といわんばかりの圧巻のパフォーマンスに、地蔵化するなというほうが無理な話だ。

拍手すらできずに呆然としていると、ダンスリーダーのソウタが思いがけない宣言をする。「近い将来ドームに立てるアーティストになる。2024年までにはその景色を見せます」と。そして「アリーナツアーで会いましょう」という次を匂わせる言葉を残し、BE:FIRSTはステージから姿を消した。

あれよあれよという間に夢への階段を駆け上っていく7人。そのスピードがあまりにも速すぎて、どんどん遠くへと離れていく寂しさを感じてしまうこともある。でも、もう彼らの沼からは抜け出せないし、これから抜け出すつもりもない。ついていくと決めたからには、私たちは彼らを信じてついていくだけ。夢を超えた先に、彼らと見たい景色が待っているのだから。

文/山本 洋子

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