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きっと、好きになる【今日もコレカラ/第778回】

毎月30軒、50軒の美容院を取材させていただいていたころ。

どうやって店ごとの特徴を書き分けようかと悩んで編み出したのが「店名の由来」と「内装のこだわり」を聞くことだった。
これを聞くと大抵、話が1時間を超える。みなさん、話したくて仕方ない、その人にしか話せないエピソードがあるのだ。

ところが、最後までうまく話を引き出せなかった方がいた。
「うーん、内装にはあまりこだわりがなくて……」とおっしゃる。だいぶ粘ったけれどなかなか口が重い。そろそろ次の取材現場にいかなきゃならない時間になったとき、ふと思いついて、「どうしてこの場所に店を構えたのですか?」と聞いてみた。

するとその方が、ああ、といって顔をあげ、ぽつぽつっとお話をしてくださった。

僕、美容師デビューした直後から、ずっと通ってきてくださったお客様がいらしたんです。まだ未熟だった僕をいつも応援してくださって、見守ってくださった大切なお客様です。でも、そのお客様、病気で車椅子生活になってしまったんですよね。

僕が当時勤めていた美容院は、階段しかないところでした。病気になったその方を、今こそ髪を整えることで元気づけてあげたかったのに、車椅子だとお迎えできなくなってしまって……。
それで、自分が独立するときは絶対に、エレベーターのあるビル、車椅子で入れるお手洗いが作れる場所って考えたんです。

そうでしたか、と私は相槌をうった。
「そのお客様、今はきてくださっているんですか?」とは聞けなかった。ちょっとうるんでいるような目に、なんとなく、聞いちゃいけない雰囲気があった。

帰り際、大事なことを思い出した気がします。今日は取材、ありがとうございましたと、その方は深く頭を下げられた。私も、聞かせてくださりありがとうございましたと、頭を下げた。

200文字のお店紹介のキャプションに、この話は書けなかった。
でも、聞いてよかったなあと思った。
その美容院やその美容師さんのことを、取材前よりもずっと好きになった。その、好きになった気持ちで、別のキャプションを書いた。

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先週の土曜日、編集ライター養成講座の講義で、「興味を持てる話が聞けないときはどうしていますか?」と質問された時にお話ししたこと。

自分と約束していることがあるんです。
好きになるまで、帰らない。
帰るまでに、好きになる。きっと。

※「今日もコレカラ」は朝7時に更新です。バックナンバーが読めるようになりました。

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好きなことは楽しくてしょうがなくていくらでも頑張れるという経験があるので、編集部員の「好き」や「得意」を大事にしたい思いがあります。

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