
ほとんど無理ゲー【さとゆみの今日もコレカラ/第 310 回】
雑誌のライターをやっていた頃、仕事を受ける優先順位は
‧原稿料が安いもの
‧納期が短いもの
‧メジャーじゃないもの
と決めていた。
雑誌のライターは椅子取りゲームだ。1冊に1本しかない美容企画で、誰かが指名されれば誰かが落とされる。
原稿料が高く納期がたっぷりありメジャーな雑誌には、ベテランの凄腕ライターがひしめいている。そんな先輩たちと新人ライターが勝負できるわけが ない。
かくて、どれだけ安く撮影するか(予算がないので)、どれだけ早く書き上 げるか(納期が短いので)、どうやって取材相手を口説くか(メジャーじゃ ないので)をいつも考えていた。
モデル20人を連れて海ロケに行く予算がないので、カメラマンさんに海の写 真を撮影してきてもらい、それを大きく引き延ばして背景にしたことがあ る。会議室に100均で買ったインテリア小物を散りばめ、ハウススタジオ風 に撮影したこともあった。
制限があるほど工夫が生まれる。このころ、制限があるほど発想が自由にな ると知った。
いまでも、一見不自由に見える制作条件で仕事をするのが好きだ。
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さて。
仕事に関しては、制限どんとこいの私なのだけれど、人間関係においてはな るべく指定されたり決められたり縛られたくない。
今日も明日も上司が変わらない会社員をするのが苦しかった。結婚も7年と 10年しか続かなかった。
よく不倫は制約が多いから燃えるなどというけれど、いやいや、家族でいる ことの方がよっぽど制限が大きい。家族であるままただ一人の相手と愛し合 い続けることほど、難しいルールはないと思う。ほとんど無理ゲーに感じ る。きっとものすごくアクロバティックな工夫や発明が必要なのだろうと思 う。
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夫婦共に歌人である、永田和宏さんと河野裕子さんの、死別に至るまでの (いや、死別した後も)愛のやり取りを読んで、もうほとんど宇宙レベルの 発明を見せられたような戦慄を覚えている今日この頃。
結婚したあと何十年も、人はこんなに愛し合えるものなのか。 なぜだ。
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「ジンギスカンGakuya」は本多劇場がプロデュースするお店だった。とい っても、中は普通の飲食店。テーブルを取っ払った空間に、、小劇場特有の”背もたれのない椅子”が隙間なく並んでいた。そこに客がぎゅうぎゅうと詰めて座っている。


