検索
SHARE

意識高い休日の理想と現実【さとゆみの今日もコレカラ/第320回】

あなたは美容師です。
目をつぶって、一番大切なお客様の顔を思い浮かべてください。この人だけは失客したくないという、大事なお客様の顔を思い浮かべてください。その人とは今までいろんな話をしたと思います。いろんな髪型を提案しました。これからもきっとあなたのもとに通ってきてくれるとあなたは思っています。

ところがひとつ、あなたの知らないことがあります。
最近その人が仲良くなった友達がいて、その友達に、私が通ってる美容院がすごくいいから、一度試してみない? と勧められているのです。その人は、ちょっとだけ心が動いています。でも、次の予約はしちゃったからとりあえずもう一度あなたのところでカットして、それから次をどうするか考えようと思っています。

さて。
明日、その人が美容院にやってきます。ひょっとしたら、その人と会うのはこれが最後になるかもしれません。あなたは、どんな準備をして、どんな話をして、どんな施術をし、どんな次回提案をしますか?

これは、美容師さん向けのセミナーをしていたとき、セミナーの最後によくやっていたプチワークである。
これがラストになるかもしれないと思ったら、あれもしてあげたい、これもしてあげたい。心変わりしないように、やっぱりあなたじゃなきゃダメと思われるように、できる工夫はなんでもしたいと思う。参加者の人たちから、そんなコメントを聞く。
では、その気持ちで明日のお客さんを接客してみましょうか。全員に対しては無理だとしても、まずは一人から。できるようになったら二人、三人。みんな大きく頷く。いつもそんなふうにセミナーを締めくくっていた。

でも、である。
しかし、である。
悲しいかな、私も含め、多くの人は毎度その集中力を持続することはできない。美容の話だけではない。大切な仕事、大事な友達、愛する家族。頑張れる時も大切にできる時もあれば、なあなあになる時もある。集中力は危機感と連接している。毎日危機感を持っていきる人生もしんどい。余命宣告されたことがない人間が、ジョブズの「今日が人生最後の日だとしたら」を、日々感じ続けるのは難しい。

✳︎

シェアラウンジに仕事しにいったはずなのに、マッサージチェアでマッサージしただけで帰ってきた。連休初日がケータイゲームで溶けた。4300円課金した。14時間寝た。今日こそは。


✳︎「今日もコレカラ」は毎朝7時に更新し、24時間で消滅します。今日もこれから良い一日を。

【この記事をおすすめ】

中学卒業までにいくつの小さな最後に気づくことができるだろうか。



writer