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「深見町では何にでもチャレンジできる」若者が移住し、新しい風が吹く【能登のいま/第24回】

2026年3月、以前CORECOLORで取材させていただいた佐藤さんに会いに旧深見小学校(深見センター)を再訪しました。2024年10月奥能登豪雨後に輪島市深見町を訪れて以来、1年5ヶ月ぶり3度目の訪問です。「うちに新入社員が入ったんだよ!」と佐藤さんは満面の笑みで、昨年11月に東京から移住した堀晴菜さん(25)を紹介してくれました。初めてインタビューをしたときは「60代の俺が、深見町では若手なんだ」と言っていた佐藤さん。待ち望んだ若者が、深見町にやって来ました!

「3月に能登演劇堂で上演される無名塾の『等伯-反骨の画聖-』を一緒に観に行かない?」と友人に誘われて決まった女子4人旅。1年5ヶ月ぶりに降り立った、のと里山空港は出迎えの方々も多く、以前よりも活気が戻ってきているのを感じます。

空港からふるさとタクシーで和倉温泉駅まで向かい、レンタカーを借りて七尾市にある能登演劇堂へ。観劇後は、輪島市まで約1時間45kmのドライブです。途中、佐藤さんから「生憎の強風で嵐のようですから気をつけて」と連絡がありました。七尾市は舞っていた雪が止み晴れてきたところだったので「山を越えると天気も変わるのかな」と話しながら向かいます。

輪島市の海岸沿いに向かう道中、能登に初めて来た友人が窓の外を見ながら「見た目では震災があったってわからないね」と呟いたのを聞き、私はハッとしました。前回来たときには倒壊した建物や瓦礫があちこちに積み上がっていたのが綺麗に撤去され、更地が増えていたのです。

17時を過ぎ日が暮れると、海岸沿いの家々に灯る明かりはほぼなく、人気が感じられません。街灯も少ないため、ところどころにある郵便局などの公共の建物や、自動販売機の強い光がホッとさせてくれます。海岸線を走っていると都会のイルミネーションのような明かりが目を引き、見ると目的地の旧深見小学校でした。

校庭に行く階段を上がると、新たにプレハブの肉まん販売所兼バーが建設されていました。基礎のポール、窓枠やサッシ、冷蔵庫、エアコン、コンセントに至るまで「ほとんど材料は、家主に許可を得て公費解体される家屋から譲り受けたんだよ」と佐藤さん。コンセントをよく見ると『National』のロゴに歴史を感じます。校庭には、能登復興留学で来た大学生が整備してくれたビニールハウスも完成。暖かくなったら、ハーブや花を植えるそうです。

避難所になっていた集会所の靴箱をバーカウンターに再利用。深見町の人に伝えると「あの靴箱がこうなったのか!」と懐かしがられる。

「新入社員のハッチ! 東京から深見町に来たんだよ!」

佐藤さんが笑顔で紹介してくれたのは、東京から昨年11月に移住してきたハッチこと堀晴菜さん。仕事関係の知人が旧深見小学校で草木染めワークショップを開催すると聞き、2025年5月に東京から2泊3日で遊びに来たのがきっかけで深見町を知ったそう。2ヶ月後に「もう一度、佐藤さんたちとゆっくり話してみたいな」と再訪しました。

「待ってたよーーー!!」と佐藤さんははちきれるような笑顔で堀さんを出迎えたそう。再訪当初、堀さんの移住への思いは30%ほどでした。しかし佐藤さん、副理事長の酒井さんと3人で3食共にして過ごした3日後、東京へ帰るまでに堀さんは深見町への移住を決心します。大学生時代に定置網漁業を何度か体験し、いつか魚関係の仕事をしたいと漠然とした思いがあった堀さん。「旧深見小学校の前の海に小さな漁港を作りたい」と話す佐藤さんの展望も、堀さんの背中を押しました。

「東京では考えないことばかりです」

会社勤務からNPO勤務に働き方が変化し「働くってなんだろう? 稼ぐってなんだろう?」と自問自答する日々だと言います。『もえるにくまん』の販売をはじめ、深見町の元住人たち向けの『深見町復興ニュース』の作成、地域のイベントに参加しネットワークを作ることも彼女の重要な仕事です。今後は、若者たちをつなぐ橋渡しもしていきたいと、やりたいことは沢山あります。

「東京での仕事は、私の仕事はこれ、と役割分担がはっきりしていたのに対し、深見町では何にでもチャレンジしやすくて楽しい」と笑顔で話します。この4ヶ月で一番印象的だったのは、校庭で飼っている軍鶏を3羽捌いたこと。怖さで手が震え、軍鶏の首をナイフで上手く落とせず佐藤さんに助けを求めると「最後まで自分でやりな」と一言。一人で悪戦苦闘しながらやり遂げたことで生きる知恵、やり切る覚悟、命と向き合うことを学んだと言います。

市内からわざわざ『もえるにくまん』を買いに訪れる観光客も。お肉たっぷりでとても美味しい! オンラインショップ、ふるさと納税でも購入できます。

「働く人がいないと、復興はすすまない」と、佐藤さんは言います。

佐藤さんたちは、1年越しで国土交通省から許可を得て、新たにタクシー事業開業に向けて準備中です。二種免許取得者も2名採用しました。現状は、佐藤さんたちが深見町から輪島市街地に飲みに行こうにも、夜に働く運転手がいないのです。実際に、私たちが輪島市内のホテルから飲食店までタクシーをお願いしたらホテルのフロントで「タクシーがいないんです」と断られ、佐藤さんが言っていたのはこういうことか、と痛感しました。

旧深見小学校を拠点にした佐藤さんたちの挑戦はまだ始まったばかり。未来を見据えて動く佐藤さんたちの活動を、これからも追い続けたくなりました。

4月11日に『深見町復興祭 春の宴』が旧深見町小学校の校庭で開催されます。地元・深見町の住人たちによる焼き牡蠣ブースをはじめ、石川県内外からも多数の出店があるそう。昨年よりもパワーアップしたお祭りに、遊びに行ってみるのはどうでしょうか。

「待ってたよー!」と、佐藤さんがとびっきりの笑顔で迎えてくれるはず!

深見町復興協議会 公式Instagram 

『もえるにくまん』には「これからもみんなで復興に燃えていこう!」という復興への熱い意欲を込めました!
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文/本間 友子

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