
○○よりは【さとゆみの今日もコレカラ/第521回】
辛いことがあったとき、やってられないことがあったとき。「でも◯◯よりはマシだよな」と思える例をいくつかポッケに持っている。
たとえば、バチカン美術館のラファエロの間。
アテネの学堂などが描かれるこの部屋の天井と壁には、それ以前、ぺルジーノ(ピエトロ・ヴァンヌッチ)などの高名な画家の絵が描かれていた。しかし、教皇ユリウス2世の命令により、その絵は塗りつぶされ、ラファエロによって新たに上描きされることになった。
ペルジーノはラファエロの師匠である。
かつて心血注いで描いた絵が塗りつぶされ、弟子がその上に新たな絵を描く。しかもフレスコ画だ。どこかに移動させるわけにもいかない。ただただ、塗りつぶされるのだ。
ラファエロがこの場所に絵を描けと命じられたとき、ペルジーノはまだ存命していた。その心中いかほどか。
15年前にバチカンを訪れたとき、思った。人生いろいろあるけれど、大抵のことは、ペルジーノよりは辛くないよなあって。
そして、今回もやっぱり同じことを思った。どんな「やってらんねー案件」も、ペルジーノの絶望に比べたらまだマシだよなあ、って。
そういう「◯◯よりは……」が、私のポッケにはいくつか入っている。
まあ、辛い時は辛いというのも大事だし、人を貶めて自分を上げるだけではダメだとも思うのだけれど。
(今年は25年に一度の巡礼の年とのことでローマ市内で4つの特別な扉が開けられているという。そこを通るとこれまでの罪が全て払われるとのことで世界中から信徒がバチカンに集まっていた。私もその扉を通ったので、過去の罪はノーカンになりましたことをご報告します)
「今日もコレカラ」は、毎朝7時に更新して、24時間で消える文章です。今日もコレカラ、良い一日を。
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