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冷蔵庫の残り物でちゃちゃっと料理は作るけど、お菓子は作らない人たちへ【炭田のレシピ本研究室/第15回】

年間100冊以上のレシピ本を読むフードライターの炭田が、いま推したいレシピ本を紹介する連載。ケーキはいっぺんに4個まで喫食可能な甘いもの好きとして、お菓子づくりにおすすめな2冊を紹介します。

「レシピは見ないな〜?」派に捧ぐセレナーデ

これは私調べなのだけど、料理をする人間には2種類いる。料理をしてお菓子も作る人間と、料理はするけどお菓子は作らない人間だ。

そしてこれまた私調べによると、後者の「料理はするけどお菓子は作らない」人間の料理はフリースタイルで、得意技は「冷蔵庫にあるもんでちゃちゃっと作る」と「目分量でパパッと作る」、決め台詞は「レシピは見ないな〜?」だ。この言葉を耳にする度、レシピこそ至高、レシピ原理主義者の私は「レシピを見ろ! プロの技にひれ伏せ!」と思っていたりするが、むろん口には出さない。書くけど。

さて。彼ら彼女らはどうしてお菓子を作らないのか? 私は見当がついている。お菓子は材料の「計量」が必要なので、ちゃちゃっともパパッとも作れないから、だ。

やはりレシピは偉大である! と誇らしい気持ちになったが、私はレシピ本という素晴らしい経典を世に広めたいので、今回は「レシピは見ないな〜?」派に読んでほしいお菓子づくりの本を紹介する。もうすぐバレンタインだしね。

料理の延長でお菓子、作っちゃお!

まず紹介するのは、若山曜子さんの『ひとつの生地で気軽に作る フランス仕込みのキッシュとタルト』。配合が同じ生地で、食事系のキッシュとおやつ系のタルトが作れる画期的な1冊だ。

三度目の私調べだが、お菓子を作らない人は、料理に比べてお菓子づくりは大仰で手間が掛かると思っている気がする。でも、普段の料理の延長でお菓子が出来上がるのなら、彼らもお菓子づくりにトライしてみたくなるはずだ。そこでこの本の出番である。

一般的にキッシュとタルトの土台となる生地は、中身の具材が食事系なのかおやつ系なのかによって、生地を作り分ける。だがこの本は、食事(キッシュ)とおやつ(タルト)のどちらにも合う“甘くない生地1パターン”だけが紹介されている。だから、いちいちレシピを覚えるの大変だなぁ……と思わずに、とりあえず配合をメモして冷蔵庫に貼ってほしい。冷やしたバターを粉類に混ぜて作る生地はザクザクの歯ざわりで、具材がなんであれしっかり受け止めてくれる。一度この味を知ってしまうと、市販の冷凍パイシートは冷凍庫のスタメンから「年イチで出番があるかないか」の存在に降格するはずだ。便利なんだけどね。

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私がお菓子づくり初心者さんに試してほしいのは「クリームチーズとブルーベリーのタルト」。材料を順番に混ぜてからタルト台に流すだけで、こんなに素敵なお菓子が作れた! と、ひと踊りしたくなる味わいが生まれる。1パターンの生地を作り込んで自分のものにしていくスタイルは、料理上手な「レシピは見ないな~?」という派の人にこそ合うと思う。お菓子づくり、意外と料理と地続きですよ。

料理は経験、お菓子は知識

さらにもう一つ。料理はするけどお菓子は作らない派を、お菓子づくりから遠ざけているのは「製法ありすぎ問題」だと睨んでいる。例えばインターネットでレシピを検索すると、同じ「パウンドケーキ」を名乗るレシピでも5パターンの製法が存在したり、これまた同じ「クッキー」のレシピでもバターを室温のまま使うものと溶かして使うものがあったりして、違いがよく分からない。これらはお菓子づくりをする上で、やる気を失わせる要因だ。

とはいえ、料理は日々の経験から自分の「舌」頼みで味を再現できるが、お菓子は知識がモノを言う世界なので仕方ない……私もかつてはそう思っていた。が、この製法ありすぎ問題に切り込む1冊があるので、紹介したい。るいさんの『プロのお菓子が今日からつくれる お菓子の相談室』だ。

著者のるいさんは、材料や製法ごとに「焼き比べ」をしてその違いをSNSで発信しているパティシエールの方。この本は、その焼き比べの成果がレシピと共にまとまっている。つまり、自分好みの味を作るにはどのレシピを選べばいいのか分かるのだ。かく言う私も、この本を手にしてやっと「パウンドケーキは、シュガーバッター法のずっしりした味が好き」だと気付いた。それ以来、他の製法はスルーして生きている。

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普段お菓子を作らない人に試してほしいのは、スコーン。他のお菓子と違って専用の型が要らないし、雑に作れば作るほどうまい。アフタヌーンティーのプレートにちんまり乗った冷めたスコーンとは違う、家庭の味がする。焼き立てをガブッと頬張れば、きっと自分で作るお菓子のおいしさに目覚めるはずだ。

お菓子づくりの盲点、ここにあり

もうすぐバレンタイン。だけど愛する夫は甘いものがさして好きじゃないし、なんなら今はダイエット中。毎晩せっせとリングフィットに精を出していて、心なしか肩回りがムチムチしてきた。

この状態でお菓子を贈るのは気が引けるので、今年のバレンタインディナーは豆腐をハート型に抜いた「ラブ冷奴」を提供予定だ。たんぱく質だし。

そんなわけで皆さん。私の代わりにお菓子づくり、よろしくお願いします。

文/炭田 友望

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