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「世界の国々」徹底分析(前編)【運ちゃんのウィキペディアのおかげです/第23回】

長年ウィキペディアを眺め、寄稿し続けた運ちゃんが、ウィキペディア日本版のページビュー(以下PV)を使って分析します。今回の注目トピックは「世界の国々」です。

家族と食事中、懐かしい話をしている時に2人の名前があがりました。1人は10数年前に自分たちの結婚披露宴で司会をお願いした友人です。もう1人は世界50カ国以上のコーヒー農園を渡り歩いている高校の先輩で、共にある国の名前を聞くと思い浮かべる人という共通項があります。

披露宴で司会をしてくれた友人はアナウンサーとして働いていた職場を退職すると、ウガンダで小学校教員として働きました。コーヒーハンターの先輩は高校を卒業後エルサルバドルに留学しました。本人から直接その経緯を聞いて以来、馴染みの薄いアフリカと中南米の国名をみると、国名とほぼイコールで2人の名前が浮かぶようになりました。

外務省のホームページと並ぶウィキペディア情報

そんな会話の流れでウガンダ(月平均PV:142位)とエルサルバドル(月平均PV:123位)(*1)の2つの国名をGoogle検索しました。すると検索結果順位の1位がどちらの国も外務省のページで、2位がウィキペディアでした。やるなウィキペディア!

*1・・・国名の後ろに明記している( )内『月平均』PVの順位と数字は、ウィキペディア日本語版の過去8年9カ月間のランキング順位です。対象期間は2015年7月から2024年3月で、対象国は日本が国交を持つ国及び日本の196カ国です。

私の中のウィキペディア愛好家「魂」のスイッチが押され、196カ国の国名を検索しその検索順位の1位と2位を調べました(*2)。その結果、検索順位1位と2位の94.9%が外務省もしくはウィキペディアのサイトだったのです。さすが外務省、凄いなウィキペディア!

*2・・・GoogleのChromeシークレットウィンドウを使い、2024年3月に実施。対象国は日本が国交を持つ国及び日本の196カ国です。

つまり、私たちはある国のことを調べる場合、かなりの高確率でウィキペディアを読んでいることになります。日本語版ウィキペディアにおけるそれぞれの国の記事(ページ)の情報量は非常に膨大です。196カ国の平均だと8.8万文字の情報量があります。今回調べてみたところ、日本を除き最も文字数が多かった国はロシア(月平均PV:4位)です。ウィキペディアには国に関する多くの情報があるので外務省のサイトと並んで重宝されている理由もわかります。

ちなみに、外務省とウィキペディアより上位だった5.1%(18カ国、20サイト)も気になりますよね。

調べると、政府観光局のサイトや旅行会社・政府系機関・報道機関は想像通りですが、意外だったのはブランド名のサイトが3つあったことです。食品会社ロッテのチョコレート名だった、ガーナ(月平均PV:126位)。アメリカのアウトドア用品会社だったコロンビア(月平均PV:60位)。そして日本コカ・コーラのコーヒーブランドのジョージア(月平均PV:11位)でした。また唯一のSNSでランクインしたのも同じくジョージアで、34万超えのフォロワーがいる駐日大使のティムラズ・レジャバさんのX(旧Twitter)でした。

さらに勢いで日本語版ウィキペディア記事(ページ)の、『月平均』と『月間最大』のPVを表(*3)にしました。

*3・・・対象は日本が国交を持つ国及び日本の196カ国のウィキペディア日本語版ページ。『月平均』『月間最大』PVは2015年7月-2024年3月(過去8年9カ月間)の平均と期間中の最大月数の値。 月間最大PVのTOP60は青色でPV数を表示しています。数字は切り捨て表記です。

以後は上記データを元に、私たちがどのようにウィキペディアを閲覧しているのかを考察していきます。

『月平均』PVは長期間の平均値ですが、『月間最大』PVは1カ月間の最大値となるため、ある時期に非常に検索が集中したことを示しています。急に関心が集まった国の場合は『月間最大』PVが『月平均』PVの数十倍になります。

『月平均』PV上位はお馴染みの国々

まずは過去8年9カ月間の『月平均』PVトップ14をみていきます。

私たちが日頃から興味関心が高い国々だと言い換えることができる『月平均』PVランキングにはお馴染みの国々が並びました。そして、有事のニュース報道が多いロシア、ウクライナ、イスラエルがランクインしています。

6位のウクライナの『月平均』PVは6.5万(過去8年9カ月間)ですが、2022年2月の『月間最大PV』は143万と通常の20倍もアクセスが増えました。戦争が始まる前の2015年7月から2021年12月までだとアクセスは2.8万PV(過去78カ月間)で、『月平均』PVの順位も40位以下ですから、戦争がきっかけで国のウィキペディアのPVが増えたことがわかります。

14カ国の中で気になった国は3カ国あります。シンガポール、ジョージア、ベトナムです。

8位のシンガポールは「アジア」では韓国、中国についで3番目にランクインしました。千葉県の人口と同程度の601万人(人口:111位)(*4)。日本に在住しているシンガポール人は3,499人(在日者数:35位)(*5)で、シンガポールに在留している日本人は3.1万人(在留邦人数:11位)(*6)です。

*4・・・『人口』は日本が国交を持つ国及び日本の196カ国を対象とし、国際連合人口基金 世界人口推計2023のデータを元にランキング化したものです。1億人以上は100万人以下を切り捨て、数千万人は千桁以下を切り捨て、数万は百桁以下を切り捨て表記しています。

*5・・・『在日者数』外務省領事局政策課「在留外国人統計(旧登録外国人統計)」2023年6月現在データを元に集計。

*6・・・『在留邦人数』は外務省領事局政策課「海外在留邦人数調査統計」2023年10月1日現在データを元に集計。百桁以下を切り捨て表記しています。

11位のジョージアはイタリア(月平均PV:14位)、インド(月平均PV:15位)、カナダ(月平均PV:16位)といったメジャー感の強い国々より『月平均』PVが多いとは予想外でした。静岡県の人口と同程度の370万人(人口:128位)と、ジョージアに在留している日本人は149人(在留邦人数:93位)と多くはないのにも関わらず『月平均』PVは上位でした。X(旧Twitter)が人気の駐日大使のティムラズ・レジャバさんや飲料ブランドのジョージアの影響もあるのかもしれません。

13位のベトナムは中国に次ぎ日本に滞在している訪日者数が多い(在日者数:52万人)国です。国民も9,885万人(人口:16位)と増加中なので近い将来、日本より人口が多い国になるはずです(ちなみに日本の人口ランキングは2023年にエチオピアに抜かれて現在は世界12位です)。

『月平均』と『月間最大』のPV差が最も少なく、安定して私たちが興味を持っている国ということができるでしょう。ベトナムの月間最大PV月は2019年2月。アメリカ(月平均PV:1位)のトランプ前大統領と北朝鮮の金正恩総書記の会談場所にハノイのホテルが選ばれた時でした。

日本人の関心が高い「地域」は北米とアジア

続いて、ウィキペディア日本語版『月平均』PVランキングトップ60カ国(*7)を世界地図に記しました。7つの地域別にみていきます。

*7・・・対象は日本が国交を持つ国及び日本の196カ国の、ウィキペディア日本語版「国」の記事(ページ)。期間は2015年7月から2024年3月までの過去8年9カ月間の合計PV。エリアの区分は外務省ホームページの区分を採用しています。

まずは、「北米」の2カ国、アメリカ(月平均PV:1位)とカナダ(月平均PV:16位)は両方ランクイン。それ以外の6つの地域で最も関心が高いエリアは72%の国がランクインした「アジア」です。日本から近い国々ということもあり22カ国中16カ国がランクインしました。15カ国ある「中東」は半分以上の8カ国がランクイン。続いて、「欧州(ヨーロッパ)」と「大洋州」「中南米」「アフリカ」と続きます。アフリカの場合、54カ国中2カ国しかランクインしていません。

60カ国の中で特に気になった国は3カ国あります。アイスランド、パラオ、モロッコです。

北ヨーロッパの島国、41位のアイスランドは国名が似ている隣国アイルランド(月平均PV:29位)に比べると人口は10分の1以下で、37万人(人口:171位)の小国です。愛知県豊橋市や長野県長野市と同じ程度の人口の国の『月平均』PVが41位と上位なのは、オーロラに興味を持って検索する人が多いのと、もしかすると名前が似ているアイルランドとの違いを調べる人がいるからかもしれません。また温泉好きの方々なら世界最大級の屋外温泉施設「ブルーラグーン」に興味をもったり、火山大国なので噴火のニュースがあった際に検索数が増えることも多いようです。過去8年9カ月間で最もPVが多かったのは、2018年6月にサッカーW杯に出場した月間19.5万PVでした。

48位のパラオは人口が1.8万人(人口:191位)。国土は鹿児島県の屋久島とほぼ同じ大きさです。1994年に独立しすぐに日本とも国交を結び国連に加盟しました。パラオに在留している日本人は260人(在留邦人数:73位)で、日本在住のパラオ人は43人(在日者数:147位)です。コロナ禍前の2019年でも日本からの旅行者数は年間2万人弱でした(*8)。第一次世界大戦終了後に1919年から1945年まで日本が委任統治していたこともあって親日国。日本語由来のパラオ語には「だいじょぶ」や「おじさん」などがあり、1,000語以上が使われています。過去8年9カ月間で最もPVが多かったのは、当時の天皇・皇后両陛下が来日したレメンゲサウ大統領と会食したと報道された2016年7月の月間5.1万PVでした。

*8・・・日本人年間来訪者数は1万9,742人。(2019年:パラオ政府観光局/在パラオ日本大使館のホームページより)

53位のモロッコは、南アフリカ(月平均PV:34位)と共にアフリカでベスト60にランクインしました。人口は3,784万人(人口:39位)の国です。ヨーロッパに近い北アフリカに位置し、サハラ砂漠があり主要産業は観光業という国です。人口が1億人以上いるアフリカの国のエジプト(月平均PV:62位)、エチオピア(月平均PV:74位)、ナイジェリア(月平均PV:89位)より上位だとは意外でした。モロッコは、2022年12月に月間最大PVである32.5万PVをあげています。サッカーW杯で最高成績4位になった月です。ウィキペディアを観察していると、スポーツへの関心がその国へ関心にもつながることがわかります。

今回の前編では私たちが日本語でよく読んでいる「国」記事『月平均』PVランキングを確認しました。次回の中編は『月間最大』PVランキングから、人はどういった時に世界の国に興味関心を抱いて検索するのかを探っていきます。

多様な文化や価値観を知ることがとても好きです。今回も異国を知ることは、結局は自国を知ること、自分たちを知ることになると感じます。「世界」を題材にしたテレビ番組で特に好きなのは、テレビ東京の『YOUは何しに日本へ?』『世界!ニッポン行きたい人応援団』です。シンプルな企画ながら、ついついチャンネルをあわせてしまいます。TBS『世界くらべてみたら』や、今春はじまった日本テレビ『世界頂グルメ』もチェックしています。またグローバルは全く関係ない番組ですがテレビ東京『家、ついて行ってイイですか?』も大好きです。また次回『世界の国々』中編で!

本データ及びランキングはすべて2015年7月以降のウィキペディア日本語版のPVを使用しています。

文/運ちゃん

参考:

『世界を旅するコーヒー事典』川島José良彰(マイナビ出版)
『ジョージア大使のつぶや記』ティムラズ・レジャバ(教育評論社)
『今が見えてくる世界の国図鑑』井田仁康/監修(ナツメ社)

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