婚活から学ぶ! 理想の仕事相手の探し方【絵で食べていきたい/第13回】
「絵の仕事を得るために」行動した経験はなくても「理想のパートナーを得るために」婚活をしたことがある人はそれなりにいるのではないでしょうか。私自身は一時期「婚活」に関する仕事をよく受けました。プライベートで「一度はやってみよう」と婚活を頑張った時期もあります。現在もお一人様なので、私が「婚活に学ぶ」といっても説得力はないでしょう。でも、絵で食べていくために自分に合った仕事相手を見つける方法を、婚活に例えるととてもわかりやすいのです。今回は婚活になぞらえて、理想の仕事相手を見つける方法を考えます。
目標をたて、期限や優先順位を決める
結婚相手を見つけるにも絵で食べていくにも、これが正解という方法はありません。でも頑張っているのになかなか成果がでない場合は、目標のたて方を見直すといいかもしれません。
たとえば、「必ず結婚する」と決めた人のほうが「いい人がいたら結婚する」と考えている人に比べて、結婚する確率は高くなるのではないでしょうか。「30歳までに」など、期限を決めていればなおさらです。絵の仕事も同様で、3年以内に必ずイラストレーターになる 、と決めている人と、いつかなれたらいいな、と思っている人とでは、行動や結果に差が出ると思います。
「いい人が見つかったら結婚しよう」と考えているのになかなか相手が決まらないのは、「いい人」の基準が都合よく変化してしまうからかもしれません。悪くない人と出会えても「もっといい人がいるかもしれない」と思うと、なかなか決断できません。そうならないよう、せめて「いい人とはどういう人か」の基準は決めておくべきでしょう。年収は希望に満たないけれどルックスは自分好みとか、生活スタイルは合うけれど年齢が理想よりオーバーしているとか、そういう人が現れた場合、どこまで譲れるか考えておくのです。
そもそも「いい人がいたら結婚する」とは、「いい人がいなければ結婚しなくても構わない」ということです。つまり、この場合の「結婚する」は「ある条件が揃ってはじめて達成したい目標」です。
これを絵の仕事に置き換えると、ある日自分が夢見ていたような素敵な仕事を、憧れのクライアントから依頼されたらやってみよう、という感じでしょうか。もちろん可能性がゼロだとはいいません。でもこの条件が揃うまで待つとしたら、目標の達成は相当難しく、時間もかかるのではないでしょうか。
私が10代の頃「イラストレーターになりたい」と憧れていた時の心境はこれに近かったと思います。しかし最初の会社をやめて次の仕事の契約が1年で切れ、フリーランスを選択した時は状況が違いました。当たり前のように給料をもらっていた身には、多少の貯金はあっても所属先や収入がない状況は予想以上にきつく、早く仕事を得なくてはと焦りました。当然「いつか素敵な仕事が来たら」とのんびりしてはいられません。自分からあちこちに「仕事はありませんか」とアプローチした結果、仕事を得ることができたのです。
婚活でも仕事でも、本当に実現したい目標でないと叶う率は下がる。逆に実現しなくては困るほど切羽詰まれば、真剣さも変わって叶いやすいという訳です。
さらに、その目標を難しいと思わず「できて当たり前」と思えると、より達成がしやすいと思います。
たとえば「周りの人は必ず〇〇歳までに結婚しているし、自分も同じようにしたい」と思っている人の場合。その環境なら周りも情報をくれて出会いの機会も増えそうですし、本人も決め時を逃さないでしょう。皆がやっているから自分もできると思っていれば、そもそも「結婚したいから婚活するぞ」と強く意識することさえないかもしれません。
絵の仕事をしたい人の場合も同様です。周囲ですでに同じような仕事をしている人が多いほど、チャンスや情報も得やすいだけでなく、「絵で食べていく」ことへの意識的なハードルが下がると思います。(このあたりは【第10回】でも書きました)。
2ステップで好意や信用を得る
さて、「本気で結婚する」と決意したら、より結果の出やすい婚活をしたいところです。ちなみにここでの「婚活」は、婚活アプリや相談所を利用した活動を想定しています。婚活の主体はもちろん性別を問いません。
・門前払いされないための1ステップ
昔、友人が「婚活デート」に行った時の話です。周りから「初回だけでいいから、いわゆる『婚活の王道ファッション』で行け。次からは何を着てもいいから」といわれたそうです。本人はそんなことが大事だろうかと思いつつ、素直に従いました。友人はその初デートの相手とめでたく結婚しています。
婚活ではよく「門前払いされないために、まずは万人受けを狙う」ことをすすめられます。自分を知ってもらう前から嫌われない、第一印象で候補から外されないためです。初めに多くの人が好感をもつような印象を与えて「この人はありえないな」と思われないようにするのです。普段の人間関係であれば、第一印象は 悪かったけれど、何度か話をするうちにいいところがわかって……という逆転も十分ありえます。でも婚活の場合、最初にリスト外になってしまったら挽回は難しくなります。
絵の仕事でも、依頼する時の第一条件に「最低限の社会ルールが守れる人」がよくあがります。まずは相手を安心させ、候補者リストに入れてもらわなければはじまりません。わざわざ初回から、破天荒で個性的といったポジションを狙う必要はないのです(【第2回】で、持ち込み先で突然占いをはじめた人は発注してもらえませんでした)。ポートフォリオサイトも、まずは「仕事相手として安心してつきあえるか」を意識して作るほうが、こだわりを強く押し出すより、多くの依頼者にアピールできると思います。メールでのやりとりも、堅苦しくする必要はありませんが、一般的なマナーを守る。打ち合せ に遅刻しない、納期を守るといったことも、最初のうちは特に気を付けたいものです。 相手の立場から自分を見て、門前払いラインを突破しましょう。「マナー を守ること と絵を発注されることは関係ない」と思うかもしれません。でも依頼する側は、「10代の学生が読む雑誌」と「50代の会社員が読むウェブマガジン」に描く場合の違いを考えてくれそうな相手かどうか、本人のふるまいから判断している場合もあるのです。
・2ステップ目からは、自分らしさを見てもらう
好感度の高い写真やプロフィールで候補者リストに入り、デートできるようになったら、より自分らしい部分を知ってもらいましょう。初回は婚活の定番スタイルだった友人も、2回目以降のデートでは好きな服を着たそうです。最初に「場の雰囲気に合わせられる人」という印象があれば、その後こだわりの強い格好をしても相手を不安にさせることはまずないでしょう。
絵の仕事なら、一般的なコミュニケーションができ、手堅く合格点のイラストを納期内に仕上げられることがまず1つ目のステップ。信用してもらえたら、「より自分らしさの出た作品を見てもらう」努力をしてみます。
たとえば
・本命のイラストに対して飛び道具的に、個性の強い案も出してみる。
・気軽にやりとりできるようになったら、仕事以外の活動(展示やイベント、オリジナルの新作など)をお知らせする。請求書にチラシを同封する、メールに一言近況を添える、SNSアカウントをお知らせするなど。
・媒体のスケジュールを理解して、先の企画につかえそうなアイデアや作品を提案してみる。たとえば季節ものや、大体1年ごとに特集されるテーマなど。
アプローチしてすぐに次の仕事につながることはなくても、自分らしさをより相手に知ってもらえます。
自分だけが好きでもしょうがない。自分を好いてくれる相手も検討する
婚活では「自分が好きなタイプには好かれず、興味のないタイプから好かれる」パターンがあります。絶対に自分から好きになった人と一緒になる! という目標ももちろん悪くありません。しかし、自分を求めてくれる人にこたえられる喜びもあると思います。相思相愛となれば一番ですが、相手が自分を好きなら、今の自分のままで価値があるということ。意外と一緒にいて幸せかもしれません。
仕事でも同じで、自分が熱烈にアプローチしても届かないこともあれば、向こうから見つけて頼んでくれることもあります。多少自分の理想と違っても、やってみたら意外と面白かったり、相手に喜ばれて嬉しかったりと、いいことがあるかもしれません。選り好みするなとはいいません。でもせっかく自分の良さを認めてくれた相手を、興味がないからとすべてむげにしなくてもいいかなと思います。選ばれる側に甘んじる必要はありませんが、思い込みで視野を狭めるのはもったいないからです。
婚活では、理想が高く自分にも他人にも厳しい人ほど「今の自分を好きになってくれる人なんてたいしたことはない。本当の私にはもっと立派な人がふさわしい」と、自分に向けられる好意を素直に受け取れない傾向がある気がします。
絵の仕事でも「本当の自分はもっとできる。できる自分にふさわしい仕事があるはず」と、来た依頼を断ってしまう人がいます。くり返しますが、間違いではありません。確固たる信念で、本当に望みの仕事を得られるまで自分を磨いて辛抱し、やっと希望通りのチャンスを得た! という人も実際にいます。でもこれもなかなか険しい道です。実現するまでの間は別の仕事で稼ぐ、誰かの扶養になるなどしないと、続けるのは難しいでしょう。はじめから向き不向きを決めつけすぎず、来た仕事を試してみることで可能性は広がります。自分の良さを認めてくれた人とも付き合ってみたら、相手の魅力に気が付くかもしれません。その上で他の出会いを探すこともできるのです。
たとえば私の場合、はじめて仕事をもらったギャル雑誌は、当初は存在も知りませんでした。でも実際に仕事をもらったら、自分が面白いと思うことと、描かせてもらうものの 相性が良くて、思いのほか楽しかったのです(この経緯は【第2回】に書いています)。自分では「お洒落で大人っぽい媒体」に憧れがありました。でも「派手で面白い、ちょっと尖った表現もOKな媒体」ではのびのびと描きたいようにイラストが描け、しかも喜んでもらえました。その後、憧れていた大人っぽい雑誌からの依頼ももらえるようになりました。もちろんとても嬉しかったのですが、ギャル雑誌はもういいや、とはちっとも思いませんでした。もし「自分が昔から憧れていた媒体の仕事」だけにこだわっていたら、貴重な仕事相手を一つ 、失っていたかもしれません。
次の一手が見つからない時、過去の経験と比べてみる
ここまで、経験している人が比較的多そうな「婚活」を例に、絵で食べていくことに当てはめながら、効果的な方法を考えてみました。
婚活に限らず、目標を実現するには同じような方法が効くことがあります。絵で食べていくつもりがなかなかうまくいかない。そんな時、婚活でも就活でも部活動でも、過去の経験を振り返ってみると「その人独自の勝ちパターン」が見つかるかもしれません。
たとえば、さきほど「はじめてのデートは王道スタイルで」と書きました。でも最初から個性的な服装で出会ってゴールインしたカップルもいるでしょう。これまで自分の好みを追求してうまくいった人が、急に「絵の仕事だけは何かセオリーがあるはず」と、人のやり方を真似しても、もしかしたらうまくいかないか、うまくいってもストレスがたまるかもしれません。「王道」が万人にとっての最適解とは限らないのです。
自分が何を望み、どんな時に幸せを感じるのか。わかっているようで、意外と誤解していることもあります。次の一手に行き詰ったら、過去の経験からうまくいったこと、いかなかったことを思い出してみる。その時に自分が感じたことやとった行動を参考に、次の手を考えるのも有効ではないでしょうか。
文/白ふくろう舎
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