年齢を重ねてもバリバリ働き、健やかに人生を楽しむ秘訣を教えてくれる。『運動脳の鍛え方』
パチッと頭のスイッチが切れたように、突然睡魔に襲われることが増えた。50歳が近くなったころから現れ始めた症状が日増しにひどくなってきている。起きてから3、4時間しかたっていない、元気なはずの午前中の時間帯。集中力があるうちに頭を使う仕事をするように、一日のスケジュールを組んでいた。ところが、「今は集中しなきゃいけない。間違いがあってはいけない」というタイミングで、手のひらから水が零れ落ちるようなスピードであっという間に体力のバロメーターがゼロになる。はじめは不調に抗い机にかじりついていたが、どうしても眠気に勝てず、気づけば2時間ぐらい気を失っている。それから眠気のサインが出たら15分の仮眠をとるようになった。
これが噂の更年期なのだろうか。これ以上症状が悪化しないうちに、何か対策をしなければ仕事に差し支える。そんな不調に悩まされていた私が出会ったのは、茂木健一郎先生の著書『運動脳の鍛え方』(リベラル社)だった。
運動の大切さは頭ではわかっているものの、身体を動かさない言い訳ばかりを矢継ぎ早に思い付く。完全テレワークなので通勤で歩く必要がない。食事は家で済ませる。週に何回かスーパーに行くけれど、徒歩ではなく車を利用する。子どもの習い事の送迎が忙しくてジムに通う時間はない。ためしに万歩計を付けてみたところ、結果は1日平均約2,000歩と惨憺たるものだった。そんなときに書店の健康コーナーで、この本と出会った。
脳科学者としてテレビでもよく拝見する茂木先生。書籍の表紙には『なぜ世界のビジネスエリートはひたすら運動しているのか?記憶・集中・創造力が爆上がり!!』と書かれている。
仕事に必要な集中力と記憶力はこの本を読んで実践すれば手に入るに違いない!
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少し話はそれるが、先月から加齢の悩みを共有する仲間を求めて、50歳以上の人だけが入会できる紹介制のオンラインサロン『Good Elders』に入会した。メンバー一覧を見ると、各界の第一線で活躍されているビジネスエリートの方ばかり。入会する前からお名前を見たことがある方もちらほらいた。『Good Elders』は50歳以上という年齢が入会条件になっているので私が最年少のはずなのだが、みなさん私よりもエネルギッシュで輝いている。なぜそう思ったかというと、朝の運動部『運動0645』に参加したときのことだ。パーソナルジムのオーナーが指導してくれるトレーニングで、時間は朝6時45分から7 時までのわずか15分。だが私にとっては1時間マラソンする以上の強度に感じられた。トレーニングの途中で耐えきれずに膝をつけてしまう上に、翌々日にはきっちりと筋肉痛がやってくる。その一方で、お兄さまお姉さまたちは笑顔でやすやすとメニューをこなしている。ビジネスエリートとして活躍している人たちは、体のメンテナンスも手を抜かない。
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そういう経緯で運動を諦めかけていたときに出会ったのがこの本だ。本の表紙を読み良い解決策を教えてくれると直感した。脳が突然シャットダウンしてしまうという悩みに、この本はどのような解決策を示してくれるだろうか? 茂木先生が本の中から語りかけてくる。
「『このまま運動不足の生活を送り続けると、脳はどんどん退化していく』んだよ」
「やっぱり……。脳を働かせるためには運動をしないとダメなんですね」
しょんぼりする私に茂木先生は優しく語りかけてくれる。
「『有酸素運動は記憶力の改善や脳の健康維持、老化防止に役立っている可能性がある』という共同研究が発表されているんだよ」
「有酸素運動って、マラソンしたりジムに通ったりするやつですよね? 時間がないのですが、なんとかならないでしょうか?」
「『筑波大学がおこなった研究では、ゆっくりしたペースのウォーキングやヨガのような「超低強度運動」を10分間おこなうと、その直後に記憶力が向上することが明らか』になっているんだ」
「10分でいいんですか? 汗かかなさそうですけど。ほんとうにこんな短時間の軽い運動で効果ありますか?」
「『脳の記憶に関わる部位である「海馬」の活動が活発になり、記憶システム全体が向上することが、最先端の機能的MRIによって実証された』ので大丈夫だよ」
そして翌日から茂木先生の教えを実行に移した。私は疲れなさそうで家でもできるという理由でヨガを選んだ。朝起きたら身支度をして、子どもたちの食事の支度をして、一杯コーヒーを飲んでからヨガをモーニングルーティンにすることに決めた。これをはじめて1か月もしないうちに、以前と比べて心身のバランスが整ってきた。さらに午前中に気を失うことがほぼなくなった。茂木先生の教えが活きている!
茂木先生はモーニングルーティンに取り組むコツも教えてくれた。それは、早寝すること。当たり前のことだと思うかもしれないが、仕事と家事が終わって一息つくと、ついつい深夜までYouTubeを見たり、本を読んだりしてソファーから立ち上がれなくなってしまうことがある。茂木先生いわく、脳から「眠気」の指令が出たら素直に従ってみることが早起きにつながるのだそうだ。早寝早起きしてヨガをモーニングルーティンで行う。これで日中の仕事に対する集中力が上がったのだから、茂木先生には心底感謝している。
実はこの本に出会う前に、病院にも行ってきた。更年期の症状を和らげる漢方を処方してもらい、医師がすすめるサプリメントも購入した。だが症状が治まらなかったので、近所のドラッグストアを訪れた。薬剤師さんいわく、「今服用している以上のものは販売していません。もう一度病院で相談してみてください」とのことだった。ただ、薬剤師さんが言うには、私と同じ症状で薬を買いに来る人が多いらしい。私の場合は、病院に行ってもダメ、薬局もダメ。辛い毎日を送っていたところに、茂木先生の著書との出会いがあり、日常生活を取り戻した。もし私のような人がいたら、茂木先生の著書から得られるものがあるかもしれない。
文/小日向 佑月
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